すごい風ですねえ。うなりをあげてます。さっき戻って、階段を転がり降りてきたトミーと散歩をすませてきたんですが、彼女は道路をはうような風に向かって足を突っ張って身構えてました。雨に濡れるよりも風の方が怖いのかもしれませんね。
府中の森芸術劇場の氷室さんでした。終わってからレコード会社の人や媒体の数人で食事をして帰りました。でもねえ、今回のツアーは格好いいねえ。まあ、毎回完成度の高いツアーを行う人ではあるんですけど、今回は、違いますね。
あの格好良さはなんでしょうね。シルエットの格好良さという意味では、男の僕が見てもほれぼれします。トミーと一緒に歩きながら、街灯の明かりの下で、氷室さんのあの一瞬の動きを無意識にまねている自分にちょっぴり怖くなりました。もちろん似ても似つかないですけど(笑)。
中学や高校の時に鏡の前でエルビス・プレスリーの格好をみんなで真似した感じというと、余計気持ち悪いか(笑)。お前、いくつだ、と言われそうですよね(笑)。彼の動きとエルビスは重なるんですよ。天性のものでしょうけど、年齢を全く感じさせません。
で、何の話しをしようとしたんだっけ。したんだっけ、というのは日本語ですね。当たり前だ(笑)。いや、一瞬、スタンダップという言葉が浮かんだだけですけど、何の脈絡もないですね(笑)。STAND UP。今回の長渕さんのアルバムのタイトルですね。
そう、パンタさんだ。パンダさんじゃないですよ。彼は山田さんですけど、こっちのパンタさんは中村さんです。あの頭脳警察のパンタさんです。今日も彼と一緒でした。5月27日に放送予定のNACK5の特番を彼と一緒に作ってます。今日もその取材でした。
そのテーマが氷川丸なんですよ。今も横浜の山下公園につながれている豪華客船です。あの船は戦争中は、病院船だったんですよ。知らないでしょうね。戦争中は、客船も貨物船もほとんどの民間船舶会社の船が軍に徴用(というんですよ)されてましたけど、氷川丸もその例に漏れなかったんですね。病院船として使われていました。
病院船ですから、戦闘には参加しないで、戦地に行って、負傷した人とか、病気の兵隊さんを乗せる船です。本当は国際条約で、そういう船は攻撃してはいけないんですが、それでも沈んでしまった病院船がたくさんあったと言います。
パンタさんのお母様は、海軍病院の看護婦さんで、ペナン島というところの病院で働いていたんだそうです。戦争が末期になって、日本に引き揚げてきた時に乗ったのが氷川丸でした。つまり、もし、氷川丸が、他の病院船と同じように沈められていたら、彼は生まれていなかったことになります。
氷川丸は戦後は太平洋航路の日本を代表する客船として活躍します。そういう意味では数奇な運命を辿っているんですね。そんな船をテーマにしたドキュメンタリーというのが、その特番です。「命の船・病院船氷川丸」というタイトルになりそうです。
でも、当時を知っている生存者が少なくて、取材は結構難航してます。今日お会いしたのは、パンタさんのお母様が働いていた病院の上司に当たる方で91才。最初は、言葉も覚束なかったんですが、途中からしっかりとした記憶も戻ってきました。
パンタさんは、過激なロッカーとして伝説化しつつある人ですが、彼の原点を感じていただくことになると思います。どんな風にまとめるかは、これからの僕の仕事ですが、戦争体験を伝えるという意味でも背筋が伸びる仕事です。
語れる人がいるうちに語らないといけないんでしょうね。特に、最近は、きな臭いですし。戦争を美化するような傾向もあります。歴史が何も語らなくなる時、というのがどういうことなのか。この歌を聴きながら考えてみましょうか。氷室さんの「CALLING」を。じゃ、お休みなさい。