FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」6月後半の二週の特集が「大滝詠一と萩原健太」。伊藤銀次さん、杉真理さんに続く、大滝さん7週ぶち抜き特集。来週15日と22日の放送。3人目のゲストが音楽評論家の萩原健太さん。彼の新刊本「幸せな結末・大滝詠一が出来るまで」の紹介です。
発売が3月末なのにもう5刷りになったそうです。僕が先月に買った時は4刷りでした。発売二カ月あまりで5刷り。つまりその時に印刷した部数が売れてしまって足りなくなり刷り増しする。それが5回目ということになります。
本が売れない、特に音楽の本はそういう結果をなかなか出せないという時代のベストセラー。しかも発売元が音楽に縁があるとは言い難い老舗出版社、文芸春秋ですからね。喜ばしい。快挙としかいいようがないです。
健太さんは今、洋楽に最も精通している評論家というより研究者。彼が91年に福生の大滝さんの自宅に泊まり込んで三日三晩行ったという異例のロングインタビュー。でも、大滝さんの「これは死後公開だな」ということでそのままになっていたもの。
なくなったのが2013年。13回忌も終わったのでいいかとまとめたのががこの本。ともかく内容が濃い。「出来るまで」ですからね。物心ついた時のことから克明の音楽とのかかわりが細部にわたって語られてます。
彼が母子家庭だったことは知られてますが、母親が聞いていた音楽から彼を取り巻いていた音楽。その中でどんなものにどんな興味を示していったのか。小学生時代。中学、高校、そして上京して細野さんと出会ってはっぴいえんどに繋がってゆく。
細かいですよお。身近だったり仲の良かった友人、奥様になる女性。具体的な人物が登場して彼らとのエピソードが連なっていく。その時々の音楽について語られてゆく。ともかく入り込み方が尋常じゃないんです。
一を知るには十を知らなければいけない。もっとも頻繁に出てくるのがエルビスプレスリーで、彼を入り口にしてアメリカンポップスにのめり込んでゆくわけですが、その度合いがすさまじい。その知識欲にはただただ驚かされるばかり。
たとえば、高校の時に一日中、地元のレコード店に入り浸って、お店のレコードをほとんど聞いてしまう。それだけじゃなく歌詞カードもチェックして店員さんよりも詳しくなる。音楽だけじゃない、野球や落語、一事が万事そうなんです。
晩年、野球評論も書いたりしてましたけど、僕らみたいに表面的な通り一遍じゃない。データや分析。独自の解釈にもとずいた持論や自作。マニアというか研究者。究極の趣味人。それでいて語り口調もユーモラスで人柄がにじみ出てる。
いわゆるインタビュー。話したことを文字起こした原稿だと思ったら大間違い。丁寧に再構成されている。実際に話を聞いているような気がしてくる温度感のあるインタビュー。これは他の人には絶対にできない、書けないという本でしょう。
萩原さんは勤務していた出版社時代に行われた大滝さんとの取材で 意気投合。1時間の予定が8時間に及び、こんなことをしてる場合じゃないと翌日に辞表出して評論家になったという人。大滝さんから一番信頼されていたジャーナリスト。
そういう「大滝さん愛」に溢れた読み物として楽しめます。大滝さん関連の決定版ですね。自分がいかに凡人かということを痛感しました(笑)。でも、エルビスファンとしては随所にエルビスの名前が出てくるのがうれしかったです。
というわけで、本のタイトルにもなった97年のシングル「幸せな結末」を。じゃ、お休みなさい。