今週と言っても明日のオンエア。間に合ったと言えば間に合ったのでしょうが、今頃という誹りは免れない。最近は書き忘れたりすることの方が多くって後でまた書かなかったなあと申し訳ないような気分になることが多いです。
特に3月4月は近年になく慌ただしかったですからね。ライブも収録も書き損ねたことばかり。共同通信の「90年代ノート」の連載も終わったし、気分的に多少余裕も出てます。週一の原稿がこんなに手間がかかると思ったのも初めて。そういう年齢なんでしょう。
今まで一日でやれたことが二日かかる。そうなると実際に書く時間も含めると時には三日近く取られる。身動きが出来なくなる。それがなくなりました。ここの更新の頻度も高くなりそうです。で、半﨑美子さん。4月22日に「うた弁5」が発売になりました。
「J-POP TALKIN」にはほぼ毎回出て頂いている方。新作は3年ぶりですが、あの時も色々話を伺いました。札幌出身。学生時代に音楽に目覚めて中退。単身上京してパン屋さんに住み込みながらショッピングモールで歌い始めた「ショッピングモールの女王」です。
どこの事務所にもレコード会社にも属さないインデイーズの活動が17年。メジャーデビューしてから今年が10年目。でも、新作はまたインデイーズに戻っての発売。そういう意味では今までにない決意とかゆるぎない力強さを備えてるアルバムです。
力強さですよ。何かを見据えている。いろんなことを受け止めて地に足がついている。何を歌うとか。そういう迷いが全くない。音楽のタイプもソウル系、カントリー系、スイングジャズと色々あるんですが、そういう形に左右されてない。
それが何だろうと思って聞いていて浮かんだのが「故郷」というキーワード。全12曲中5曲に「故郷」「ふるさと」という言葉が使われている。意識してそういう曲を書こうとしたわけじゃないと言ってましたけど、その統一感は出てる気がしました。
いわゆる「故郷に帰ろう」とか「故郷が懐かしい」とかじゃない。もっと抽象的に「戻る場所」だったり「戻れない場所」だったり「たどり着けない場所」だったり、いろんな角度で歌われている。具体的に能登半島沖地震で被害にあった「見附島」という曲もある。
広い意味で誰もが「故郷喪失者」である現代人のことであり、実際に被災して故郷を失った人のことでもある。初めて知ったのですが道産子の彼女の母方の出自が能登半島の珠洲市なんだそうです。そういう具体性。「どさんこブギ」という曲もありました。
同じ被災地でも東日本大震災の後に被災地で桜を植樹していて、去年なくなってしまった方を思って書いた曲とかね。悲しさとか虚しさとかを引き受けて歌ってるのが伝わってくる。インタビューの言葉にも今までになかったオーラのような空気感がありました。
アルバムに「ぼくはぞうきん」という曲があるんです。以前は「タオル」だったけど今は「ぞうきん」。コミカルだけど「生き方」を感じる歌。世間が「汚れもの」扱いする存在に共感する。ドブネズミを歌ったブルーハーツの「リンダリンダ」を連想しました。
アルバムの力強さは「ぞうきんアーテイスト」としての自覚なのかもしれません。というような話を今週と来週でしてます。というわけで昨日がパンクロックで今日は「ぞうきんと故郷」。音楽のスタイルは全く違うけど、共通するものはあるなと書いていて思いました。
メジャーに頼らないとか、売れるとか売れないじゃなくて自分の歌を歌うとかね。精神的なパンク精神ということなのかな、とか。こじつけかもしれませんけど。そういうこじつけも自由な音楽の聴き方じゃないでしょうか、と我田引水(笑)。
ということで半﨑美子さん、アルバム「うた弁5」から「波の間」。「恐れないで 迷わないで」「進める道などどこにもないから」。「どこにもないから」「迷わない」。「生涯インデイーズ宣言」にも聞こえました。じゃ、おやすみなさい。