2023年7月になくなったPANTAさんが息を引き取る寸前まで慶一さんと詞のやりとりをしていた遺作がP.K.Oのアルバム「P.K.O」でした。ユニットの正式名称はPANTA KEIICHI ORGANIZATION。何と初のアルバムです。
PANTAさんは1950年、慶一さんは1951年。学年は二つ違いかな。1969年デビューの頭脳警察、71年にデビューしたのは慶一さんのはちみつぱい。片や過激派ロックバンド、片やはっぴいえんどの流れを組む東京のフォークロックバンド。
一時は反目しあっていたこともある。でも、慶一さんが日本語の音楽に目覚めさせられたのが頭脳警察だったそうです。それが79年のPANTA&HALのプロデユースで出会ったら5分で意気投合した、と慶一さんが言ってました。
ともかく音楽の嗜好が近かった。打てば響く。お互いがやりたいことが一を聞けば十分かる、みたいな気の合い方だったそうです。パブリックイメージとの狭間でのPANTAさんの葛藤を誰よりも理解していたのが慶一さんでしょう。
その後、P.K.Oになったのは93年。ツアーのためだったので二枚組ライブアルバムがあるだけ。そもそもは、2021年に余命一年宣告を受けたPANTAさんが抗がん剤治療を終えた22年の春に慶一さんと会って食事した時に「やろうよ」になった。
お互いのやり残していたことだったんでしょう。制作が始まって、PANTAさんがなくなった後も慶一さんが制作を続けてようやく完成したというアルバム。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」はそのアルバムを二週にわけて全曲紹介します。
ゲストは慶一さんとエグゼクテイブ・プロデユサーの田原章雄さん。田原さんは頭脳警察の「東京オオカミ」が発売された時も残されたメンバーと一緒に出て頂きましたが、PANTAさんの身辺の一切を取り仕切ったマネージャーでもあります。
今回のアルバムはメジャーなレコード会社ではなくて「マーラーズ・パーラー」とおいうレーベル。社長も田原さん。プライベートレーベル。製作費がかかり過ぎてメジャーがお手上げになったという説もあります。
どういう状態で制作が進んでいったのか。歌詞カードにPANTAさんと慶一さん、田原さんのメールやラインのやりとりが載ってました。その様子に胸を打たれました。歌詞の書き直しや曲への意見が見て取れます。
PANTAさんは絶対安静中ですけど、という前置きで田原さんが書いたものとか口述で代筆したものとか。集中治療室の中で浮かんだと思えるアイデアとかが何事ももなかったかのような口調で書かれている。
時折、冗談や駄洒落があったり、危篤というような深刻さが一切ない。慶一さんは「余命1年」について知らなかったと言ってました。伝えなかったんでしょう。アルバムは一曲を除いて全部PANTAさんが詞を書いて慶一さんが曲をつけてる。
ガンが再発する前に録った曲はPANTAさんも歌ってるんですが、そういう状態になってから残った曲は慶一さんが歌ってる。全曲について、その時の様子や心の動きや葛藤も含めて丁寧に話して頂きました。
PANTAさんの詞が今までに聞いたことがないほどしみじみとして優しいんです。慶一さんの曲がそうさせたんでしょうけど、でも、二人の心の通い合いが伝わってくる。詞と曲を通した二人の「愛の証し」のようなアルバムに思えました。
PANTAさんがどういう表現者だったのか。話を聞けば聞くほど頭脳警察の過激さだけでは語れない知識人、教養人だったと思わせてくれる二週間。放送は8月4日と11日です。というわけでアルバムの一曲目「エルザ」を。
歴代のギタリストが勢ぞろいした格調高いギターロック。8分越えの大作。エリザベス女王がモチーフだったそうです。じゃ、お休みなさい。