発売されたのは先月の半ば。少し時間が経ってしまいました。でも、聴いてなかったんです。彼は番組でインタビューさせてもらえるわけでもないですし、なかなか原稿を書く機会もない。そういう人のアルバムはやっぱり忘れるんです。
で、「毎日新聞」の「今月の特撰盤」に何を取り上げようかなと思って、そう言えばと思って聴き直したら、今までのイメージが覆させる驚きのアルバムでした。何せ一曲目の「創造」が衝撃的でした。ギターの人という音楽じゃなかったんです。
歌詞の中に「非常識を提案しよう」みたいな言葉もありましたけど、ソウルやファンク、ジャズという音楽のカテゴリーに収まらない。というより度外視している。楽器といより「音」で遊んでいる。好きな音、鳴らしたい音を乱舞させている。
「ロッキングオン・ジャパン」に載っていたインタビューを読んでいたら今まではギターで作曲してたけど、今回はほとんどピアノで作ったとありました。しかも、彼は父親がピアノを弾いていてミュージシャン志望だった。
子供の頃に親が流していたのがジャズピアノのアルバムで自分の根底はピアノがあるんだと思ったと話してました。そういう発見もコロナ禍での時間がそうさせたとも言ってました。コロナで新しい自分を見つけた一人ということなんでしょうね。
しかも今まで歌ってこなかったシリアスなことを歌ってる。10年少し前か、彼は生死を分ける大病を経験してますからね。その時に思った死生観というのかな、ひょっとしたら「死んでいたかもしれない自分」が下地になってる。
シングルにもなった「喜劇」という歌があるんですが、「ふざけた生活」ということがとっても肯定的な使われ方をしてる。好きな人とふざけ合うことがどんなに幸せなことか。そこに今の世界が重なるんです。
安っぽい励ましや希望では何も伝わらないことを踏まえている。そういう建前や美辞麗句には踊らされないという揺るぎなさがある。ピアノの弾き語りがあったと思えばギターだけの曲もある。英語や韓国語、スペイン語のラッパーともやっている。
タイトルの「Gen」は彼自身ということでしょう。等身大のアルバム。女性に人気のポップな源ちゃんというイメージは消えました。音楽家というより表現者。といううなことを簡潔に書くことになりそうです。
曲ですね。一曲目の「創造」を。楽しそうなんです。じゃ、お休みなさい。