去年の12月から江東区にある東京現代美術館で行われている展示会。すでに9万人が来場して日によっては入場規制もかかっている盛況だそうです。幸運なことに内覧会のお誘いがありました。つまり、休館日などを使って業界の人に見せるという申しわけないような日ですね。
タイトルにあるように坂本さんの作品を立体的、視覚的に表現するという試み。インスタレーション作品というんだそうです。映像や展示物を通じて音に没入して体感するというのが趣旨。これまでに公開されたものやこの会のために制作されたものです。CDやライブだけでは視えてこない、聴こえてこない空間に惹きこまれました。
僕は存じ上げなかったのですが、そういう作品をずっと手掛けられている高谷史郎さんというアーテイストとのコラボレーションが5点あって、それはもう圧巻でした。それぞれに形が異なっていて、最初に迎えてくれたのが2021年に上演されたという舞台作品「TIME」でした。
坂本さんが長年意識していたという「時間」をテーマにした音と言葉と映像の物語。舞踊家、田中泯さんが演技とナレーションを担当されていて、まるで坂本さんが自身の死を語っているように聞こえました。大画面での映像が音のすき間を見せてくれる。人の命の儚さやそれを悟った時の美しさ。スピリチャルでした。
驚いたのは三番目の「IS YOUR TIME」という展示。そのピアノの話は以前もどこかで読んでいたのですが、東日本大震災の津波で被災したピアノを使った演奏、というのかな。自動演奏ではあるのですが、その世界各地の地震データによって音が出るというプログラミングされたものでした。
つまり強い音が鳴る時は強い地震が起きた時、弱い音のときは揺れが軽微な地震の時。年間の地震データだったと思いますけど、地球の揺れがそのまま音楽になってるようでした。他の展示でもそうなのですが、根底にあるのが「自然」と「人間」。水や大地や森や風。時を超えて生き続けるものとの交信や対話。
坂本さんにとっての「音楽」とはどういうものだったのか。「現代音楽」がやるべきこととは何なのか。その根底にある「思想」を視覚化しているようでした。「芸術とは何か」を「問い続ける芸術」と言えばいいのかもしれません、と言えるほど僕には知識はないですが。
そういう音を体感するだけではなくて「アーカイブ」のコーナーもあったんです。それぞれの時代のインタビューや日記のような自筆のメモ。インスパイアされたという何冊もの本。彼の「思想」の奥深さの一端を見るようでした。安っぽい言葉になりますが「知性の宇宙」。その深遠さが世俗を超えた音になってる感じがしました。
普段、言葉のある音楽を聴いてるんで「音」と向き合う機会はそんなに多くないんです。その分、新鮮で洗われるようでしたけど、言葉の必要のない音楽だから表現できること、言葉があったら出来ないこと。言葉を越えた音楽であることは間違いないようにも思えました。それがポップスとの違いなのかなとか。
音楽は時代を超えて生きる哲学、それを体感させてくれる貴重な展示会。走り書きですが。お誘いありがとうございました。さて、曲ですが。そんなに色々知ってるわけじゃないですが、展示会の作品の説明に何度も出てきた2017年のアルバム「async」の一曲目「andate」を。
展示会は3月一杯までです。駅は清澄白河か木場。江戸時代の「粋」の本場。思わず怯んでしまうくらいの立派な美術館は坂本さんがやるのならあそこでと言われていた場所だそうです。じゃ、お休みなさい。