どんな意味ですか、と思われる方もいらっしゃるでしょうね。息をのむ、か息詰まるか、どっちなんだろうと思ったり。でも、息詰まるのどこか苦しそうなニュアンスもあるから違うな、と。大げさに言うと呼吸するのもどこか惜しいみたいな感じで引き込まれる、見入ってしまうコンサートでした。
Mr.Childrenの去年発売になったアルバム「miss you」のアリーナツアー。昨日と一昨日、さいたまスーパーアリーナで行われました。まだツアー中ですから内容や曲目には触れませんけど、すごかったです、は、変か。そういう威圧的な感じは全くなかった。驚かされたとか圧倒されたとか、そういう類のすごさじゃないです。
あれだけのバンドですから盛り上げて客席を喜ばせることはいくらでも出来るでしょう。いやあ盛り上がりましたねえ的な歓喜と賞賛を求めようとしていない。アルバム「miss you」自体がライブの盛り上がりを想定していない作品に思えましたけど、更に純度を高めている気がしたんです。
あのアルバムはファンの間でも賛否両論だったようですね。僕の知り合いのミスチルファンも「僕の聴きたいと思っていたのと少し違った」と話してました。これまでにやってきたことを遮断して自分の姿を見つめているようでした。でも、あのアルバムから「アリーナ」は見えてこなかったんです。
ホールツアーは、そういうライブでしたけどアリーナですからね。どうやって見せるんだろうと思ったりもしましたけど、予想を遥に凌いでました。そう、「純度」なんですよ。混じりけがない。音も演奏も歌も言葉も不純物が介在してない。させていない。簡単に答えが手に入るやり方や手慣れた常套手段を全部捨ててる。
真っ新な状態の中で自分の「想い」を伝えるために必要なものだけで行われているコンサートに思えました。その純度と密度に意気をのんだ、という感じでしょうね。さいたまスーパーアリーナ、一番大きいランクの客席でしょうから1万9千人はいたでしょう。でも、そういう「数量的」なコンサートじゃなかったです。
客席に何人人がいようと「数」は別の問題、みたいな空気感。張りつめた、は違うか。透明な、か。それがすごかった。ライブ見ていてふっと連想したのが大貫妙子さんと坂本龍一さんが二人で行った2010年のツアーのライブアルバム「UTAU」だったんです。先月映像を見ました。何の根拠もないです。やっている音楽も違います。
でも、こういう空気、どっかで感じたな、と思ったらあのライブの映像でした。「静寂」と「間」、付け加えれば「誠意」が音楽になってる。Mr.Childrenはバンドで編成も違うのに、表現しようとしていることに共通する何があるような気がしたんです。それでいてアリーナですよ。こういうロックコンサートもあるんだ、と思ったりしました。
半世紀へのエントランスをくぐったわけですからね。これまでの彼らと違うところに向かって歩き始めた一歩ということでしょう。前人未到のロックバンドの「けものみち」が見えているのかもしれません。ということは曲はそれですね。アルバム「miss you」から「ケモノミチ」を。じゃ、お休みなさい。