昨日行われました。THE YELLOW MONKEYの東京ドーム。東京ドームらしい、東京ドームならではのいいライブでしたよ。しかも色んなストーリーが織り込まれていてただ盛り上がったというだけじゃないしみじみした感慨もありました。
僕が見たのは2017年の公演でしたからほぼ7年ぶりか。え、そんな前になるんだ。何だかコロナを挟んで時間の感覚が変わってしまった感じ。ついこの間と思っていたのが5年以上前だったり、10年くらいのつもりがまだ数年しか経っていなかったり。
イエモンの東京ドーム自体は2020年に行われてるんですね。当初は二日間予定されていたのにコロナで大幅な縮小。声も出せない中でやったんだと思います。でも、それは行ってませんでした。取材も関係者枠もなかったんじゃないでしょうか。
その後に吉井さんの喉にポリープが見つかったりしてましたからね。でも、ポリープじゃなくて初期の咽頭がんだったんだと改めて知りました。公表はされてたみたいですけど、うっかりしてました。大変な事態だったわけです。
そういうこともあってですから当然ではあるんでしょうけど、メンバーが登場した時からテンションの高さが尋常じゃなかった。全員が高揚感を抑えられないのが一目瞭然。ヒーセさんは興奮して一睡もしてないと、吉井さんが明かしてました。
吉井さんが自分でも言ってましたけど、やっぱり声にどこか以前と違う感じもある。でも、そういうことも全てが気迫や覚悟として歌になっている。通常のライブの熱やエネルギーとは全く違うリアリテイがある。
ライブの途中でガンと診断された時の様子とか闘病中の姿、メンバーのインタビューなどの肉声が織り込まれたドキュメンタリーも流されてました。こんなにシリアスな状況だったんだと絶句しながら見てました。
吉井さんの歌の妖しいくらいの色気に鬼気迫るくらいに張りつめている。何かを「見てしまった歌」という感じだったんです。普通の人が経験しない、しようと思わない境界を越えたことのある人間の歌、と言えばいいかもしれません。
声が出ているとかきれいとか、そういう物差しじゃない。演奏曲の中で一曲だけかな、歌詞が出たんです。97年の名作アルバム「SICKS」の中の「人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)」。お祖母さんがなくなった時のことを歌ったものですね。
彼らの曲の中では「悲しきエイジアンボーイ」「桜吹雪」などと並んで好きな曲なんですが、歌の中に「死神」という言葉が出てくる。”血が泣いてるんだよ”と繰り返される。そんな言葉が違う響きになってました。
当時はそういう歌じゃないと知りつつ「ロックの中の自分の血」みたいにも聞こえていたんです。昨日は元々の意味が迫ってきましたね。「血が泣いている」。人はいつか人生を終える。そこからどうやっても逃げられない。
彼らの歌に色濃く流れていた耽美的な「死生観」みたいなものが歌をより劇的にしているようでした。ひょっとしたらこのステージに立っていなかったどころか「人生の終わり」を迎えていたかもしれない。まさに「復活の夜」でした。
新作アルバムが出来ていると言ってましたからね。そういう経験はどんな歌になっているのか。フィナーレに流れていた歌がそんな予感をさせてくれました。平均年齢58歳。若いよな、と思いつつ、復活を祝いたいです。
というわけで還ってきたイエモン。「人生の終わり」を。バンド人生はまだまだ終わりません。じゃ、お休みなさい。