FM NACK5「J-POP TALKIN’」のインタビュー。1月17日に出たアルバム「琴線歌、其の五~はやしべさとし 叙情歌を道づれに」について。この番組では4回目の登場かな。前回は2021年のアルバム「まあだだよ」の時でした。
「J-POP TALKIN’」のことは最近、触れてませんね。今年最初のゲスト、いきものがかりの時は書いたかな。その後、小山田荘平さん、ヒグチアイさんと個性的なシンガーソングライターが続いてました。
二人とも派手じゃないけどちゃんと自分の歌いたいことを形にしている。あ、今週と来週のゲスト、ヒグチアイさんは、一昨年アニメ「進撃の巨人」のテーマ「悪魔の子」が海外120か国のitune J-POPチャートで一位を記録してますから、派手か(笑)。
でも、彼女の本質は女性の気持ちを歌にすることに長けている点ですから、ヒットしたと言ってアニメソングだけで語ることは出来ませんね。特に今日発売になった5枚目のアルバム「未成線上」は、彼女の色んな面を表現した力作です。
「未成線」というのは鉄道用語で途中までで作られてその先が出来なかった線路のことなんだそうです。自分の音楽人生のこの先を歌おうとしてるアルバムでした。エキセントリックな女性のわがままといじらしさの描き方が実に巧みです。
という流れの中で林部智史さん。「泣き歌の貴公子」と呼ばれている人。今年34歳かな。まだ若いのに人生の儚さや人の出会いと別れの愛おしさを歌える数少ないシンガーですね。あんなに脆く美しい声の男性は他に見当たりません。
彼の活動はオリジナル作品と別にカバーのシリーズもあって「琴線歌」というのはその一つですね。ポップスだけじゃなく童謡や唱歌も含めた「琴線」を揺らす歌。「叙情歌」というのもそんな呼び方ですね。
先日出たのはそのシリーズの5作目。そんなに出てるんだ、と思いました。今までは「季節感」がテーマで選ばれた曲が入ってましたけど、今回のテーマは「旅路」。彼は歌を歌って行こうと決めたのが礼文島の民宿で働いている時だったんですね。
親元を離れて旅の日々を送っていた中で出会った友人に「歌手になるべきだ」と勧められて上京、コンテストやオーデイションで苦い思いをしてデビューしたという苦労人。そういう旅を経験した人だからこその選曲が光ってます。
92年のあんべ光俊さんが歌った「イーハトーヴの風」とか森高千里さんの「渡良瀬橋」とか、谷村さんの「三都物語」、さださんの「精霊流し」に混じって「椰子の実」とか「琵琶湖周遊の歌」とか、沖縄民謡の「芭蕉布」とかね。
彼が詩曲を書いたオリジナルも2曲ありました。しかも全曲がピアノと歌だけ。潔いいくらいの「歌」だけの世界。流行も時代性も超えている。それだけ「声」と「歌」に自信があるんでしょうね。
YOASOBI、ADO、新しい学校のリーダーズなどのトレンドメーカーたちの歌とは違う時間が流れている。「旅路感」に溢れてます。ポップミュージックというのはいつの時代も「旬」が面白いわけですが、それだけじゃなと思えるアルバム。
そういう曲はもう他の人に任せようかな、みたいな気になっている新春でありますって、どっか気取ってるか(笑)。というわけで林部智史さんの「イーハトーヴの風」。よく見つけてきたなあ。あんべさん、岩手出身です。じゃ、お休みなさい。