発売になったのは先々週かな。ビートルズの新曲「NOW AND THEN」。新曲と言ってもジョンレノンが残していたデモテープからAIを使ってピアノと声を抽出、そこにポールとリンゴの新たな歌と演奏、ジョージの当時の演奏を加えたというものだ。
という話は知っていたのですが、何となく気が引けていたんですね。CHAT GPTにしても希望というより将来に対しての不安材料にしか思えない人間にはAIという言葉にどこか違和感めいたものもあったんだと思います。
新曲と言われてもなあ、みたいな感じでしょうか。でも、FM COCOLOがあの曲を使った特設サイトを作るのでコメントを、という話があって聴いたわけです。何でしょうねえ。洋楽邦楽問わず、ああいう気持ちになったのは初めてかもしれなかったです。
がっかりしたらやだな、みたいなこともあって最初はちょっと引いていたんですね。でも何度か聴いているうちに自然と涙が出てきた。泣いているわけじゃないんですけど溢れてくる。嬉しいとか懐かしとか、じゃないんですね。
この年でビートずるの新曲を聴いている、と思うことの何ともしみじみした切なさというんでししょうか。「AI」と言っても声もピアノも紛れもなくジョンだし、ポールとリンゴが歌っている映像もある。そこに生前のそれぞれも重なってくる。
やっぱりビートルズだった。若い頃の生気溢れる彼らでも長髪に髭という後半の彼らでもない。どこかに”架空感”はあるんですが、それが返って「時を超えている」感じに聞こえる。年齢がどこかに消えてしまっている。
それがとっても心地よくてずっと浸っていたくなる。たった4分強の曲なんですけど、「あの頃」と「今」が凝縮されている。ジョンはまさかこういう時を想定して書いたわけがないでしょうけど、曲が「NOW AND THEN」ですからね。
何度も聞いていると色んなことが浮かんでくるわけです。高校二年生の時に初めてラジオで聞いて「何だこれは!」と思った時のこととか、ホームルームで「エルビス対ビートルズ」という討論会をやった時のこととか。
僕はエルビス派でしたけど、その後、すぐに乗り換えてしまったとか。ジョン・レノンが射殺された時のこととか。世界中の音楽ファンが、そういう思い出に浸ったんでしょうけど、それでも俺はまだ生きてる、というような感じとか。
いつのツアーだったか、浜田さんが「俺はまだ生きてる」と言ってましたけど、あの言葉が実感される曲だった。僕の中のビートルズがこれで成仏した、という感じでした。FM COCOLOに送ったコメントでは「成仏」とは書きませんでしたけど。
もし、僕みたいに「AI」という二文字に抵抗がおありの方にはAIが歌ったり演奏したりしてるわけじゃない、ということはお伝えしたいです。というわけで、FM COCOLOのサイトはこれです。短いコメントですけど。
明日は岡林信康さんを見に大阪に行きます。同じ年で数少ない「生き残り」(笑)です。というわけでビートルズの新曲「NOW AND THEN」を、じゃ、お休みなさい。