いうまでもなくBUCK-TICKのボーカリスト。19日に脳幹出血で死亡していたことが伝えられました。57才。若過ぎです。しかもライブが始まってからの体調不良。2曲目に歌えなくなって3曲目で運ばれたんだそうです。
言葉を失いました。絶句。ライブのステージでファンが見守る中だった。客席にいらっしゃった方はどう思われたんでしょう。最後の瞬間まで歌った。こんなに壮絶な最後を迎えたアーテイストは思い当たりません。
きっと本人の意志だったんでしょうね。バンドのメンバーやスタッフにはどういう形であれ何かの兆候は察していたでしょうし。それでも歌った。脳幹出血ですから発症した時はもう意識がなかったりすることもあるそうです。
雑誌の原稿を書いていた頃は割と定期的に取材はしてたんです。でも、もう25年以上はお会いしてません。最後に見たライブは30周年の武道館。その前は幕張メッセでのLUNA SEAの主催「LUNATIK FES」フェスかな。
デビュー当時とメンバーが全く変わらない。バンドの一切を自分たちでやっている。今井さんと櫻井さんのクリエイテイブな鉄壁のコンビも健在。櫻井さんの美意識も揺るぎないものになっている。ライブでの風格やオーラはもはや別格でした。
最初に見たのはインデイーズ時代の豊島公会堂だったと思います。髪の毛を立てた容貌の異様さが衝撃的でした。ビジュアル系という言葉はまだなかったですからね。”髪立て系”と化”ツンツン系”とか言われてました。
その後がメジャーデビューした後の日本青年館。恰好は異様だけど音楽はポップなんだ、と思いました。その時のライブのタイトルが”バクチク現象”。自分たちのライブに”現象”と言う言葉を使ったのもインパクトがありました。
でも、何と言っても今井さんの加工された近未来的ギターサウンドと櫻井さんの書く「闇の美学」。80年代から90年代のバブル真っ盛りに浮かれた世相に背を向けて独自のファンタジーを作り上げたバンドでした。
あ、バンドは過去形じゃありません。今井さんは「続ける」とコメントされたようです。群馬出身、BOOWYの弟分的な見られ方もしましたけど、完全に別世界を構築してました。それも”殉教のロック詩人”あってこそでしょう。
評論家の今井智子さんが最近のライブについて書かれていて健在なんだと思ってましたが、まさかの出来事でした。今井さんは、フェイスブックで「どこかで歌ってると思う」と一言でした。言葉が見つからないんでしょう。
僕はかなり客観的ですからこんな風に書けますけど、近しい方たちの心境、察して余りあります。ステージで歌いながら音楽人生を閉じたヴォーカリスト。心からのご冥福をお祈りします。ロック史に残る名盤のタイトル曲「悪の華」を。合掌です。