サザンの茅ヶ崎野球場コンサート。すごかったですね。桑田さんの地元愛と感謝の気持ちと45年というキャリアが見事に結実していた。初期の曲や代表曲があれだけ並んだコンサートは最初で最後じゃないでしょうか。
何よりもシチュエーションが良かった。野球場と言ってもプロの球団の本拠地に使われているところじゃない。地方球場色が溢れている。映画館の中継もありましたからステージの照明は演出されてましたけど客席は違いましたね。
今は野外イベントでも後方に照明塔が組まれてたりしますけど夜間照明のない地方球場。昭和の野外というんでしょうか。客席の暗い感じがどこかノスタルジックで良かった。その分、客席が一段とショーアップされて華やいで見えました。
ふっとアメリカ映画「フィールド・オブ・ドリームス」を思い浮かべたんですよ。熱狂的な野球ファンが作った手作りのグランドに引退してしまった幻の名選手が集結するという映画。その舞台の球場で今もメジャーリーグの試合が行われてます。
その試合の中継を見ていた時にグラウンドの素朴な「暗さ」がいいなあと思ったんですね。特別なことが行われているという感じが強調されていた。そういう野外コンサートは経験がないかもしれないと思いました。
フィールド・オブ・ドリームコンサート・イン・茅ヶ崎という感じかな。23年前にも見てるんですけど、あの時はそんな風には思えなかったのも45年という時間がもたらした「今、こんなことがあるんだ」という特別感でしょうね。
タイムスリップじゃないんです。スリップしてない。あの頃に帰ろうとかじゃないんだけど、時を超えている。それを実感させたのがセットリストでもありました。この歌を今、こういう状況でこんな風に聴けるんだ、という感慨。
次々に演奏される曲がどれも歌える。こんなに「歌える曲」のあるロックバンドは彼らだけでしょう。メンバーが一緒に歌っていたのもそういう印象を強くしたのかもしれませんけど、客席もそういう一体感の盛り上がりでした。
ロックバンドの評価の中に「歌える」という要素はそんなに重視されてなかったとも言えます。サザンはそういう物差しには収まらないという実感。個々の演奏もあっての総合力とエンターテインメントとしての「歌わせる魔力」と言いましょうか。
「魔力」ね。自分で書いてからオッと思いました(笑)。桑田さんのメロデイーとサザンのあの「魔力」は、日本の音楽史上唯一無二で最高峰でしょうねって、かなり話が見えなくなってます(笑)。でも、書かれるべきことが色々あるライブだったことは間違いないです。
今年、改めて思っていることが「歌謡」なんですよ。ネットの中の音楽やライブバンドに欠けているのがそれじゃないかと。作り手の意図やこだわりを離れて一人歩きする中で愛される「歌」。洋楽を経験した聴き手や音楽ファンも納得させるロックバンドの「歌」ですね。
国民的というのはどういうことか。史上最強の「歌いたくなるロックバンド」。楽しませて頂きました。この曲もやるのか、この曲が聴けるのかという連続。「YaYa・(あの時代(とき)を忘れない)」を。いや、「希望の轍」かな(笑)。じゃ、お休みなさい。