去年発売になったアルバム「今、何処」を携えた佐野元春&THE COYOTE BANDのツアーの東京公演が昨日行われました。まだ明日が横浜、その先に沖縄とか岡山とか残ってるんで詳しい内容には触れませんけど、素晴らしかったです。
いつのツアー比較してとかそういう具体的なことではありませんが今までにはないものが沢山ありました。今だから表現できる、今が一番いいのではないかと思わせてくれる内容。アルバム「今、何処」の良さが形になったライブでした。
アルバムの良さをバンドが体現していた。今年で結成18年。ロックやソウル、ファンクにスカ、基本になっているロックンロール。佐野さんがやってきた音楽でありアルバムに凝縮されていた音楽がみごとに消化されてました。
スタイリッシュ、エモーショナル、ソウルフル、インテレクチャル、そしてビートニクという感じでしょうか。すみません英語ばっかりで(笑)。凛として背筋が伸びている。勢い任せにならない。粗野にならずに自律的な抑制が効いている。
でも、情感豊かなんです。気持ちの高ぶりがそのまま歌や演奏に乗り移っている。やみくもに発散するのではなく内省的な高揚感として高まってゆく。歌詞に使われている「魂」が音楽のスタイルとしての「ソウル」と一体になっている。
インテレクチュアルというのは「知的」ということですね。「世界」を見分ける「知性」。「フェイク」に踊らされることの愚かさ。世の中に溢れている情報の何が正しくてその裏に何が隠されているかを見抜いている。
アルバム「今、何処」には詩人ならではの比喩やダブルミーングが随所に使われてました。そういう色んな要素がビートになっている。時には過激な熱量を発散しながら踊っている。そして、何よりも前しか向いていない。
去年、彼は「今、何処」と「エンタテインメント!」という二枚のアルバムを発売しました。パンデミックと戦争という未曽有の出来事の中で向き合った「時代」と対峙しようとしている。80年のデビュー以来の40年に寄りかかっていない。
同じ時代を生きたアーテイストが次々とこの世を去ってゆく中で、表現者として彼らの意志を受け継ぎ残された時間を生きようとしている。なくなったアーテストの名を挙げた思いがけないMCもありました。
潔いというのかな。そういう「明日」に賭ける思いみたいなものがひしひしと伝わってくる。でも、テイーンエイジャーの真っすぐな溌溂とした心も失わない。アルバム「今、何処」がそうだったようにです。67歳とは思えなかったです。
このツアーのアンコール公演があるといいのにな、と思いました。というわけで曲ですね。アルバム「今、何処」から「さよならメランコリア」。まだまにあいますように。じゃ、お休みなさい。