去年の年末に出たボックスですね。浅川マキさんの78年、82年、91年、93年に行われた4つのライブを収めた6枚組ボックス。全65曲が収められてます。しかもそれぞれのライブ会場や状況が違う。かなりレアなライブボックスです。
10年目を迎えたFM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」を4月からリニューアルした「J-POP LEGEND CAFE」の4月後半の特集がこのボックスセット。ゲストはアルバムの監修を務めたプロデユーサーの寺本幸司さんです。
寺本さんは浅川マキを最初からプロデユースしている人。他にリリイ、下田逸郎、イルカ、桑名正博、南正人ら、そうそうたる個性的なアーテイストを手掛けてます。1938年生れの84才。8月で何と85才になられます。
浅川マキさんの曲を歌う神戸の女性シンガーのプロデユースをしたり未だに現役。「J-POP LEGEND FORUM」時代に一か月間彼を特集したこともありました。尊敬に値するLEGENDプロデユーサー。本もお書きになってます。
70年代のフォークやロックは中心になっていたのが団塊の世代ですからね。その上の世代で今でも現場に足を運んでいるのは彼くらいでしょう。それぞれのライブについて書かれたこのライブボックスの「私的ライナーノーツ」も読み応えあります。
ニックネームが”アンダーグランドの女王”ですからね。知られざる神秘性を備えた浅川マキさんは2010年1月17日になくなって13周忌。生前もそんなにライブ作品が多くなかった彼女のライブの雰囲気を味わうことが出来ます。
アンダーグラウンド、つまり”アングラ”。もはや死語みたいなものかもしれません。あらゆるものが白日の下にさらされている。「闇」とか「影」というと「闇バイト」みたいな犯罪に近い危険なニュアンスの言葉になってます。
以前は、影の文化、とか闇の美意識、みたいなものがありました。最後まで晴れやかな舞台に出ようとしなかった彼女はその象徴みたいな人じゃないでしょうか。いつもどこかでひっそりと息づいている音楽。
実を言うと、僕もちゃんとインタビューした記憶がないんです。ライブも池袋の文芸座で行われた「最後のオールナイト」くらいしか思い出せない。アルバムを毎回ちゃんと聴くというリスナーでもなかった。
でも、いつもどこかに気になっているという不思議な距離感の存在でした。何だろうと思うんです。彼女がデビューしたのが1969年。新宿のさそり座という小さな小屋がホームグラウンドだったりしたこともあるんでしょうね。
70年代にみゆきさんの曲がゴールデン街で流れたりする前の新宿を象徴しているのが彼女だったからかもしれません。新宿のタウン誌「新宿プレイマップ」は僕の最初の仕事でしたし。思い出した。彼女の短期連載コラムを僕が担当してたんだ。
そういうことか、って今頃気づいた(笑)。ライブボックスのライブはキャリアが積まれてからのものがありますからね。その頃の彼女のライブの肉声が新鮮でした。没後13年。初めて公開されるライブ音源もあります。
ゲストの寺本さんは、ポップスの道に入った坂本龍一さんが加わったバンド、バイバイセッションバンドとリリイを結び付けた人。そんな話も出るかもしれません。というわけで、浅川マキさん「それはスポットライトじゃない」を。”アングラ”を味わって頂ければ。じゃ、お休みなさい。