行われたのは3月29日。少し時間が経ってしまいました。でも、思いついた時に書いておかないとそのままになってしまいます、ということで4日遅れのご報告です。素晴らしいコンサートでした。55周年ですから、年齢もそれ相応です。
女性なので大きな声では言わない方がいいでしょうけど、知った方が余計すごみが出る。いかに信じられないコンサートだったかの裏付けになる。75歳になったばかり。男性で言うと拓郎さんの一つ下、小田さんと同じです。
何しろ17時に始まって終演が20時15分。20分になろうかという時間。正味丸々3時間15分。休憩時間はあるんです。でも、その間彼女は引っ込まない。ステージの上手に置かれたソファーに座ってギタリスト2名と歌ってるんです。
一人は彼女と同じようにカレッジフォークを歌っていた谷さんというギタリスト。彼らの演奏で当時のアメリカンフォークを歌ってる。自分の部屋で「あの歌、覚えてる」みたいな話をしながら寛いでる感じでした。つまり休憩時間も歌いっぱなし。
「今まであまり歌ったことのないスペシャルなコンサートにしたい」という話は随所にされてました。「55周年」という半世紀以上にわたる活動を集約したようなバラエテイ。アマチャア時代に歌っていた曲から最新曲までですからね。
色んなタイプの曲がありましたよ。オペラもあるしジャズもある。ニューヨークのブロードウエイを思わせるミュージカル仕立ての曲もある。ポップミュージックのあらゆる要素を織り込んだようなセットリストは生涯一度でしょう。
彼女のお父様は戦前から活躍していたジャズトランぺッターでお母さまはジャズシンガー。ご自分ではそういう音楽を歌おうと思っていたのに時代のめぐり合わせで「フォークソングの女王」になってしまった。
そこから離れようとして英語のジャズやスタンダードを歌うようになった。それでいて今、どこのコンサートでも一番聞きたいと言われる歌が「さとうきび畑」と「涙そうそう」だと言われてましたけど、その2曲も弾き語りでした。
89年にオープンした渋谷buknamuraの中でも一番音のいいコンサートホールで知られてました。彼女のコンサートは何と98回目。最多でしょう。でも、今年で改築のために一時閉館。これが見納めならではの個人史のようなセットリストでした。
そんな3時間以上のコンサートの締めくくりがジャズのスタンダート「聖者の行進」。ドラムやべースなど様々な楽器の音を声で奏でる”ヴォイスインスツルメンタル”。七色の歌声どころじゃない。しかも踊りながら歌ってました。
声量も伸びにも疲れを見せない。すさまじかったです。スーパー・プロフェッショナル。終わってから挨拶があったんですが、あっけらかんと「もう一時間くらい歌いたかったわ」と言われたのにはひっくり返りそうになりました(笑)。
オーチャードホール再開は4年後。彼女は60周年。僕は80才(笑)。そこまで頑張れるといいなあとは思いましたけど、次元が違いました。畏るべし、森山良子。怖れなくてもいですが(笑)。ということで曲ですね。やっぱり「さとうきび畑」を。
と書いているところで坂本龍一さんの訃報が流れてました。幸宏さんに続いて坂本さん。とんでもない年になってます。じゃ、お休みなさい。