”感動”と”興奮”ねえ。他に浮かばなかったんだからしょうがない。もちろん、そうじゃなかったということではないんでこれでいいと言えばいいわけですが、もうちょっとマシな表現はないのか、と思いつつではあります。
佐野元春&THE COYOYTE BANDのツアー”WHERE ARE YOU NOW”の最終日。素晴らしかった。あの時と比較してどうなのか、という対比の中でのことではないですが、今までで最も充実していたんではないかと思えるライブでした。
ツアーがそうであるようにライブは常に一期一会なわけですから、比較のしようがないわけで、一番良かったという言い方は本来的には不可能なんですが、気分としてはありますね。こういうライブは今までなかった、最高だよね、という気分ですね。
あの時がどうだったとか、あのライブが良かった、この曲を聴いたあの頃のライブが懐かしい、みたいな感覚が皆無だった。古い曲をやっても当時にはなかった解釈とか味わいとかが全然違う。簡単に言えばカッコよかったわけです。
何がカッコよかったか。まずはバンドですよ。THE COYOTE BANDがともかくカッコよかった。若いバンドにはどう転んでも、というか、逆立ちしても出来ないような円熟の演奏。でも、丸くなってるわけじゃない。しなやかで軽やかで渋い。
キャリアと実力の蓄積。ロックもブルースもファンクにスカやレゲエ。8ビートも16ビートも4ビートも全部身体に入っている。こんなにソウルフルに揺れる心地よく小気味いいロックンロールを聴かせるバンドは今、他にないでしょう。
バンドの演奏でありながら、それぞれが自分の持ち味を生かしている。さりげなくて節度あるリフやフレーズが的確で無駄がなく余裕が感じられる。若いバンドのような自己顕示的ナルシズムがない。つまりセンスがいいわけです。
で、そういうバンドに育て上げた佐野さんが音の空気の中で生き生きしている。ビートを呼吸しているかのような自然体。今年は「SOMEDAY」から40周年。COYOTE BAND以前の曲もやりましたが、全く違ってました。
そういう演奏は”興奮”ですね。前半にそういう曲が並んでたんですが、「HEAT BEAT」とかすごかったですからね。あの曲だけじゃないか。自分が少年じゃなくなってるからこそ分かる少年性みたいなものへの愛おしさ。それが”感動”かな。
アンコールで「SOMEDAY」「ヤング・フォーエバー」と並んだのはまさにそれでしたね。自分のことじゃなくて今の少年に伝えようとしている。デイランの曲名がそうでしたけど「フォーエバー・ヤング」ですからね。
「永遠に若く」じゃなくて「若さよ永遠に」。自分たちの仲間はもうちりじりになってしまったけど、そうじゃない「君」がいる。「SOMEDAY」もそういう歌に聞こえた。その後に続いたのが「インデイビジュアリスト」と「ニューエイジ」でした。
もう自分たちは"NEW”でもなくなったと自覚するから歌う願いのような永遠のメッセージ、と書いてから本編のことに戻るのは流れがよくないかもしれませんが、そそこまで考えて書いてません。思いつくままね。
COYOTE BANDの曲はどれもそういう「今」を踏まえているように思えた。”あれから何もかも変わってしまった”と歌う「優しい闇」はその典型でしょうし。時代の荒野を見てしまった。希望にあふれた未来なんでないと知ってしまった。
新作アルバム「ENTERTAINMENT!」は、そういうことを踏まえた上で、改めてエンターテインメントテーマにしたアルバムでしょうからね。それが”感動”ということですね。デビュー43年。今が一番いいと思わせてくれた夜でした。
と一気にここまで。頭に血が上ってます(笑)。で、新作「今、何処(Whre Are You Now)」は来週発売です。というわけで曲ですね。何だろうな。「Young Forever」かな。じゃ、お休みなさい。