書いたのは前田絢子さんというフェリス女学院の教授。アメリカ文学・文化専攻。特に南部の研究者。これまでもエルビスの本は何冊か出している方ですね。で、時事通信から本の書評を頼まれました。
みゆきさんの「ラストツアー」に取り掛かってはいるんですが、明日がNACK5「J-POP TALKIN’」の鈴木慶一さんの完パケなんで昨日はその台本を書いていたり、今日はこの本を読んだりと、なかなか集中できません。
ビートルズの本とか細野晴臣さんの本とか、時事通信からの書評の依頼は何度かありましたが、エルビスが回ってくるのは思いがけなかった。日頃の仕事は日本のものばかりですし。嬉しかったですよ。
エルビスプレスリーが1968年に行ったテレビ用のスタジオライブ。悪名高いマネージャー、トム・パーカー大佐の商魂で60年代のエルビスはライブをする機会がなかった。全部映画会社に売ってしまったんですね。映画の中でしか歌えなかった。
何年ぶりだったか忘れましたけど、テレビの番組とはいえ目の前にお客さんがいる形で行われた久々のライブ。まさに「帰ってきたエルビス」でした。その番組を入り口にしたドキュメント。面白かったです。
68年ですからね。マーチン・ルーサー牧師やロバート・ケネデイが暗殺されるという事件が番組にどう影響していたか。その中で歌われた「If I Can Dream~明日への願い」という歌がどういう経緯で出来上がったのか。
エルビスを単なるお飾りにしたくない番組プロデユーサーと金儲けにしか見てないパーカー大佐との駆け引き。エルビスも含めてそういう主要な人物がどういうルーツや背景があるのか。
書いたのがアメリカ南部の研究家だったということもあるわけですが、視点が音楽に留まっていない。エルビスが生まれたテネシー州テュペロ、育ったメンフィスという街にどんな歴史があるのか。
南北戦争や人種差別の歴史も踏まえながらゴスペルや黒人教会の成り立ちが書かれ、それがエルビスの音楽にどう影響を与えたのか。当時のアメリカの人種差別の中でエルビスがなぜ保守派から忌み嫌われたのか。
エルビスが貧しい家庭生まれたという話は伝説化してますけど、両親のルーツやエルビスを見つけたサン・レコードのサム・フリップスという人がなぜブルースに惹かれていたのか、などなど。
あのテレビ番組は歌舞伎町の餃子屋で見たんですよ。僕は大学の二年かな。学生運動に首を突っ込んだり、友達のアパートを転々としてたりという、ま、フーテンみたいな生活をしていた時に放送を知ったんですね。
餃子屋のおやじさんに「テレビつけてよ」と頼んで見せてもらったんです。エルビスは中高生の時の憧れだったんです。でも、60年代に入ってマンネリの退屈な青春映画ばかり出るんで、もういいや、と見なくなってました。
あの革のスーツで歌うエルビスは、そういう毒にも薬にもならない頃とは別人でした。そんなことも思い出しつつ、そういう次元の本じゃなかったです。というようなことをうまくまとめようと思いました。
というわけで、曲は洋楽か。エルビスの「If I Can Dream~明日への願い」を。今のアメリカのことのようです。明日は大宮。その後はスーパーアリーナのback numberのライブです。じゃ、お休みなさい。