FM NACK5「J-POP TALKIN’」のインタビュー。4月20日に5年ぶりのアルバム「I like this,too」が出ます。インタビューはその前か、2015年のアルバム「俺の空は何処にある」の時以来ですね。ということは7年ぶりか。
SIONは、今のシーンの中では他にくらべる人がいない独自の存在ですね。あの胸のうちを絞り出すようなハスキーボイス、というよろ嗄れ声は美声とか悪声という次元を超えた重みを持ってますし、歌の内容もそうですね。
淡々としてるけど人間の本質をついている。浮ついた世の中や世間の見過ぎ世過ぎを超越している。痛みとか孤独とか悲しみとか絶望とかを引き受けた強さと優しさを備えている。それをことさらにしない。独り言のように歌っている。
世の中のレールには最初から乗れてないんだということが前提になっている。若い頃はそういう矛盾とか不条理みたいなものを吐き出すような歌もありましたけど、この20年くらいはそういう感じじゃないですね。
BEGINの上地等さんが、三宅伸治さんのバンドのベーシスト、高橋”Jr”知治さん、ハモニカのケン・コテツさんと組んだビリケンブラザースのライブを見に行ったら上地さんがSIONの「がんばれがんばれ」をカバーしてました。
彼は「世の中にこんなに優しい歌があるんだ、と思った」と言ってましたけど、色んな「がんばれソング」の中でも際立って優しい歌でしょう。「頑張っても頑張ってもどうにもならないことがある」と知っている人間の「頑張れ」でした。
山口県出身で、15歳の時かなほとんど家出同然で京都に行って歌い始めた。東京に出てきたのはその後で、新宿西口のアクセサリー屋でバイトしながら歌っていた。85年の自主制作盤のタイトルが「新宿の片隅で」でした。
初めて会ったのは86年のメジャーデビューの時だったと思います。90年代の初めまでは取材で定期的に会ってましたね。シンコーミュージックの「SHOUT」という雑誌でライブハウスツアーを同行取材したことがありました。
でも、2000年代は距離がありました。前回のインタビューも10年ぶり以上だったんじゃないかな。メジャーではリリースがなくても自主制作盤は毎年出してます。で、今回は5年ぶりのメジャーです。
初めてピアノトリオと組んでる。渋ーいアルバムです。こんな歌うたえる人はいないよな、と思わせてくれるアルバムになってます。知らない人が聞いたら、こんな人がいるんだ、とびっくりするかもしれません。
彼の本名、僕と同じなんです(笑)。誕生日も一日違い。おまけに新宿から始まってる。妙な親近感があります。ということで、新作アルバム「I like this,too」から「どんな日も眠ってしまうんだな」を。ある種の達観の歌ですね。
明日、「日本経済新聞」の朝刊に台湾のライブラリーのことを書いた記事が載ります。「日経」を購読の方、「文化欄」をお忘れなく。じゃ、お休みなさい。