FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」の4月の特集、「最新音楽本2022」の最終週で取り上げるのがこの本。新潮選書です。タイトルにあるように平成の0年間の一年ごとに一曲取り上げて、その年がどういう年だったかを語ってます。
これが実に面白い。今回の特集はこの本を紹介するための一か月だったと言っていいくらい。タイトルだけ見ると「ヒットした曲」の羅列、「ヒットパレード」のような本に思えるかもしれませんが、全くそうじゃない。
もちろん、そういう曲もあります。誰もがこの曲だろうという曲も大ヒットもあれば、ヒットはしたけどその年の年間チャートにも入ってない曲もある。でも、なぜその曲を選んでいるかの「論」が展開されている。
例えば、平成元年はひばりさんの「川の流れのように」。誰もがそうだろうな、という選曲で、平成二年はBB・クイーンズの「踊るポンポコリン」。なぜか。「平成」の始まりはみんなが「踊る」ことで始まった。
作詞はさくらももこんさん。作曲が小田哲郎さん。プロデユースが長門大幸さん。その曲を入り口に、さくらさんが好きだったクレージーキャッツの精神の継承とか、ビーイングのプロデユース、さくらももこさんと大滝詠一さんと論が展開される。
例えば、平成四年は森高千里さんの「私がオバさんになっても」なんですね。テーマは「平成と経て女性はどう変わったのか」。各章でその頃の雑誌の引用もされていて、週刊文春の「阿川佐和子対談」の森高千里さんとのやりとりが入っている。
阿川さんが「42歳」、森高さんが「26歳」。阿川さんは自分が「オバさんだ」を連発。当時は「42歳」は、そう思われていた。平成の女性観が語られている。同じような女性観は、その後の曲でも展開されている。
一つのテーマが時代を置いて違う曲で比較されていたり一冊を通した「裏テーマ」がある。単に一年一曲を選んでいるという本じゃない。前書きに「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉の意味が実感できるような「30曲の物語」とありました。
本は10年ごとに一部、二部、三部に分かれていて、「ミリオンセラーの時代「スタンダードソングの時代」「ソーシャルの時代」と銘打たれてます。10年ごとに時代が変わってきたとよくわかる。
圧巻は「ソーシャルの時代」の2009年、平成11年以降でしょうね。CDから配信、SNSと変わってゆく中で、その曲がなせヒットしたかを解き明かしてゆく。2014年に「初音ミクはなぜ世界を変えたのか」という名著がある著者ならではでした。
柴那典(とものり)さん。1976年生まれ。「ロッキングオン」の編集部にいてフリーになった「音楽ジャーナリスト」。自分でそう言ってるんです。「音楽ジャーナリスト」という肩書に誇りを持ってる感じ。
僕には力不足で書けなかったことをもっと高い質で書いている人。音楽について何か書きたいと思う人はぜひお読みになるのがいいと思います。音楽について書いたり語ったりするのは楽しいことだ、というのも伝わるでしょう。
というわけで、平成29年の曲を。「新しい時代への架け橋」という見出しがついてます。星野源さん「恋」。「踊る」ということで「ポンポコリン」との比較検証になっている。「平成」は誰もが踊ることを楽しむ「多幸感」の時代だった。
見事な分析だなあと思いました。令和は誰も踊れない時代になってますからね。こんなにお天気も無茶苦茶では踊りようもありません。踊るのは心臓ばかりって、自律神経失調症です(笑)。じゃ、お休みなさい。