FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」の4月の特集「最新音楽本2022」の二週目の収録でした。ゲストはフォークシンガーの中川五郎さん。彼が書いた本「ぼくが歌う場所・フォークソングを追い求めて50年」が去年の秋に平凡社から出ました。
中川五郎さんは、1949年生まれ。アメリカのフォークに興味を持ち、高校生の時に高石友也さんをきっかけに自分の歌を作り始めました。彼が書いた「受験生のブルース」がもとになって高石さんの「受験生ブルース」が誕生しました。
高校生で活動を始めた関西フォークの立役者の一人。その一方で雑誌「ブルータス」などでアメリカの音楽の紹介記事や評論、訳詞なども手掛けていて、80年代から90年代にかけては、自分で歌うことよりもそちらの方が多かった人でもありますね。
再び、90年代の終わりから歌うようになって、東日本大震災や原発事故があったりという状況も作用して「プロテストソング」を意識的に歌うようになった。かつての関西フォークの持っていた社会性を更に深めた歌を書くようになった。
「ぼくが歌う場所~フォークソングを追い求めて50年」という本は、自分史と同時に日本のフォークソングがどんな紆余曲折を経てきたかを綴った本。曲が書けない歌えなくなった時期があったり私生活で最低な父親だったとか、かなり赤裸々です。
でも、物書きでもありますからね。個人的なことを書きつつ独りよがりになっていない。大きな事務所やレコード会社に所属しないでたった一人で音楽と向き合ってきたフォークシンガーの軌跡です。
日本ではシリアスなことや社会的なことは敬遠されるのが商業音楽なわけで、そこに入らない活動を何が支えているのか伝わってくる貴重な本。特に2000年代に入って「プロテストソング」に回帰してからは、そういう感じですね。
ウデイ・ガスリーやピート・シーガーやボブ・デイランがやっていたように、戦争や差別、歴史の教科書には乗らないような日本の出来事を「バラッド」として歌う。
今、世界で起きていることをどう歌うかということにも繋がりそうです。
音楽は平和でなければ成り立たないと見せつけられる日々の中で「プロテストソング」について考えてみる。そんな時間になれば、という放送。オンエアは4月11日です。というわけで曲ですね。彼がこういう曲を歌っていると改めて知りました。
2017年のアルバム「どうぞ裸になって下さい」の中の「一台のリヤカーが立ち向かう」という曲を。横須賀で反核運動を続けている人のことを中心に歌った曲。天安門事件の時に戦車の前に学生が立ちはだかった映像を思い浮かべました。
こういう政治的な歌は好きじゃないという方もいらっしゃるでしょうけど、こういう歌もある、こういう人もいる、ということで。じゃ、お休みなさい。