先月の9日に発売になった新刊です。発行は小学館。書いたのは1953年生まれのノンフィクション作家、中部博さん。すごい本です。電車の中とか食事をしながらとか、原稿を書いたりスタジオにいる時以外は離せなくなって数日で読み終えました。
西岡恭蔵さんは「プカプカ」の作者として知られるシンガーソングライター。「トラベリンバス」をはじめ、矢沢永吉さんに提供した詞には名曲が多いという作家でもありますね。1999年に50歳でなくなりました。
19歳の時に彼を知ったという中部さんが、「プカプカ」を入り口に恭蔵さんの生涯を追ったノンフィクション。正確に言うと恭蔵さんと奥様のKUROさんとの生涯と言った方がいいでしょう。業界でも有名なおしどり夫婦でした。
取材ノートを作り始めたのが2012年。2013年に二人のお墓参りをしてから取材にとりかかったと後書きにありました。本人の書き残した日記や創作ノートはもとより全部のアルバム。そして家族や音楽仲間、古くからの友人まで取材を重ねてます。
じっくりと腰を落ち着けて丁寧に取材して、資料や作品と突き合わせて綴ってゆく。KUROさんは、やはり作詞家でもあったわけで創作上の一心同体のようなパートナーだった。二人で海外を自由に旅しながら作品を作っていった。
そう言う関係で思い浮かべるのは加藤和彦さんと安井かずみさんでしょうが、恭蔵さんとKUROさんの旅はもっと自由で放浪感がある。ヒッピー的と言っていいかもしれません。最後までそういう生き方の二人だった。
なくなった人の伝記を書くのは覚悟がいります。なぜならどんな風になくなったかということは避けられませんからね。なぜ、そういうなくなり方だったかということと向き合わざるをえない。そこまで追っているんです。
つまり、ミュージシャンの伝記でありつつ、そこに留まっていない。ガンでなくなったKUROさんと彼女の後を追うように逝ってしまった恭蔵さん。お互いの人生の全てを共有し愛し合ってた夫婦の「愛情物語」でもありました。
ここまで取材してるんだ、という驚き。そのことを真摯に綴っている。感動的でした。こういう本がノンフィクション賞をもらうといいなと。400頁を超える本ですが、長さが苦にはならないと思います。
西岡恭蔵さん。好きなアーティストでしたけど、直接話したことは数回しかないんです。改めてアルバムを聴き直そうと思ってます。中部さんは40年くらい前に、戸井十月さんに紹介されたことがありましたが、いい仕事をされたなあ、と思います。
というわけで、恭蔵さんの「サーカスにはピエロが」を。去年出したURCのベスト盤「青春の遺産」にも選ばせてもらいました。あの歌がどんな歌だったのかも生い立ちまでさかのぼって考察してます。拍手です。じゃ、お休みなさい。