自分で書いてから言うのもなんですけど、いきなり「泣きました」はまずいでしょう。そういう身もふたもない直接的かつ情緒的な言い方は、物書きにとっては反則というか、禁じ手みたいなもんです。そこに逃げてはいけません。
そういう言葉を使わずに読んでいる人に同じような感情を持ってもらえるかどうかが、書き手の生命線でもあるわけです。と言っても書いてしまったんだからしょうがない。そういう気分になってしまった。
ごちゃごちゃ書いてますが(笑)。まあ、ごちゃごちゃ書くのが仕事みたいなもんですからね。11月23日に発売になるRADWIMPSの10枚目のアルバム「FOREVER DAZE」。昨日、インタビューしたばかりです。
新作アルバムは2018年以来、3年ぶり。2019年には映画「天気の子」がありました。あの映画の主題歌は「愛にできることはまだあるかい」。歌の中で最後は「まだある」と歌っていたわけですが、その後にコロナの2年間がありました。
「愛にできることはあるかい」と言葉に出す余裕もないくらいに世界が閉塞感に包まれていた。どのバンドもアーテイストもツアーどころかライブも出来なかった。RADWIMPSはドームツアーに留まらずワールドツアーも中止になってしまった。
ワールドツアーはアメリカ、ヨーロッパ、アジアを回る正真正銘のワールドツアーでしたからね。日本の音楽史上最大規模の中止と言っていいでしょう。野田さんはインタビューでも「事務所はやっていけるだろうかと思った」と言ってました。
でも、アルバムにはそういう悲壮感がない。内容は彼らがずっと歌ってきていたことの総集編のようであり原点回帰のようでもある、人がこの世に生を受けることの意味を創造主に向けて問いなおすようなシリアスでヒューマンなものですね。
次々に襲い掛かる悲劇の中での叶わぬ願い、枯れない夢や求め続ける未来への問いかけ。どん底を経験したからこそ拾える宝。儚い希望を祝おうとする愛おしいまでの無垢な言葉。でも、音楽がどこか心地よいんです。
暗くならない。不思議な宇宙的な浮遊感がある。コロナで時間があったせいもあるんでしょう。色んな音が織り込まれている。メロデイーの抑揚だったり言葉の隙間にまで音が支えている。こういうアルバムは初めて聞いたかもしれない、と思った矢先でした。
アルバムの後半、14曲中の12曲目「かたわれ」という曲。オーケストラとエレクトロニックがミックスされたりという曲もあったりする中でキーボードと生ギターのうって変わったようなシンプルな編成。え、こんな曲が来るんだ、という曲でした。
ゆるやかなフォーク・ロックのようでいて懐古的にもならずに優しい。その中にこんな歌詞があったんです。”宙ぶらりんの僕は どこに行くんだろう 宙ぶらりんのまま いつか終わるんだろう”。野田さんの繊細なあの声が沁みました。
最近の気分がそのまま歌になっていた。え、俺の事じゃん、という感じかな。それまで集中して聴いてましたからね、不意を打たれた感じで涙が出てしまったわけです、ということでした。そんなにことさらに書くことでもないですが。
ま、そんなことがあった、ということで(笑)。番組ではこんな話はしないと思いますが(笑)。仕事で聴いていてもそういうことはあるんです。つまり、それだけ素晴らしいアルバムだと思ってください。いいインタビューでした。
ということで。アルバムは発売前ですが。RADWIMPS「かたわれ」を。ぜひ、アルバムの流れの中で聴いてください。じゃ、おやすみなさい。