44年ぶりの野音。いうまでもなくキャンデイーズ時代。引退表明をしたという場所。でも、当時は見てません。何度か書いてますけど、70年代には”あっち側””こっち側”という分断、というのかな、境界線があって、アイドルは”あっち側”でしたからね。
僕は”こっち側”にいたわけで、キャンデイーズは全く縁がなかったんです。テレビでよく歌ってるかわいい3人組という感じ。客席で掛け声や合いの手を入れる男の子に対しては、半ば呆れてみてました。
ただ、拓郎さんが曲を書いたり喜多條さんが詞を書いたりしてましたからね、他のアイドルとは違う親近感はありましたけど、どっかで自分が関わる音楽じゃないと思ってました。今だから言えますが、ナベプロというのもあったかもしれません。
でも、一昨年かな、彼女のソロで復帰したアルバムとコンサートを見て、若干考えを改めた、は大げさか。見直したという感じだったんですね。年齢を感じさせない。ちゃんと大人になっている一人の女性アーテイストとして新鮮な存在に見えました。
というようなことをどっかで書いたんですね。それをソニーの担当の方がご覧になっていて今日のコンサートに声をかけてくれました。そういうお誘いがなかったら、自分から見たいとは言えなかったでしょうね。
キャンデイーズ解散を発表したという記念すべき場所。でも、僕はそういう思い入れがあったわけじゃないんで、そういう感慨は持ちようがない。本人も客席ももちろんそうじゃないことはビンビン伝わってきました。
一番の収穫は、キャンデイーズにはこんなに良い曲があったんだ、という発見でしょうね、って今頃言ってる(笑)。しょうがないんです、そういう時代だったわけですから。これっばかりは時代のせいということに尽きるでしょう。
何よりもアレンジとミュージシャンですね。佐藤準さん(Key)がリーダー、音楽監督、アレンジも彼でしょうね。是永巧一さん(G)、美久月千晴さん(B)、ソウル透さん(D)、竹野昌邦さん(Sax)。
もう説明の必要がないくらいに実績のあるそうそうたるミュージシャンばかり。そこにコーラスの渡部沙智子さん、高柳千野さんに蘭さんも加わった女性3人の歌。演奏も歌もアイドルソング的なチープさが皆無だったんです。
特に、キーボード、ドラム、ベースがすごかったですね。もっと言ってしまえば美久月さんでしょうね。独壇場。あの弾力性と重量感と色気のある歪んだ太いべースがステージ全体を引っ張っている感じでした。
こういう歌だったんだ、と驚いたのは「その気にさせないで」と「ハートのエースが出てこない」かな。スリーデイグリーズみたいでした。こんなにソウルフルでファンキーな曲とは思いませんでした。「やさしい悪魔」もそうかな、カッコよかった。
「アン・ドウ・トロウ」もオシャレな大人の歌でしたし。女性3人の歌が良かったこともあるんでしょうけどね。当時、キャンデイーズに曲提供していた作曲家は、こういうことをイメージしてたんだだろうな、と思ったりしました。
あの頃、何を聴いてたんだろうとかね。でも、そういう時代だったんです、って何度も言ってますけど(笑)。でも、こういうのが音楽の奥深さなんでしょう。イメージとかで判断しちゃいけない。時間が経って分かることもある。
野音、やっぱりいいなあ、と思いました。でも、こんなに周りは暗かったかなと思ったんですね。日曜日でももっとビルに灯っていた明かりがほとんどない。そうか、これがコロナ禍か、緊急事態宣言か、と思いました。
これが今年最初で最後の野音になるのかもしれません。今年もそろそろ大詰めです。「33回転の愛のかたち」の感想、ありがとうございました。感動してます。というわけで、曲です。「ハートのエースが出てこない」。じゃ、お休みなさい。