二週間分のまとめ録り。今日、収録したのは三週目と四週目。「1980年~82年」「83年~86年」という二本。分かりやすく言うと「HERO」以降。70年代のアルバムの中にあった青春の残滓のようなヒロイックな生々しさが大人の痛みに変わっていった時期、ハードボイルド色が色濃くなっていった時期、そして解散のドラマですね。
全部のアルバムを聞きなおしましたよ。自分の本や、当時書かれた記事を読み直したり。いろんなことを思い出しました。自分にとっても青春だったなあ、という感じでした。特に、「虜(TORIKO)」「黄金(GOLD)」のあたりは、そういう感じでした。「ラブ・マイナス・ゼロ」を加えたニューヨーク三部作の時ですね。
ニューヨークに取材で同行してましたからね。思い出すことが多いのも当然なわけですが。でも、今思うと、あれだけの規模のレコーデイングをよくやったなという感じですね。ボブ・クリアマウンテン、ニール・ドーフスマンという二人のグラミー賞エンジニアを起用して、現地で作業しているわけですからね。
僕も音楽プロパーのライターだったわけでもなく、業界のこともほとんど知らなかった。一枚のアルバムを作る工程とか、コストとか、今なら当然思い浮かべるようなことも当時は考える余裕もなくはしゃいでおりました。あの時代の音楽状況とか、その中でのどのくらい大胆な冒険だったのか、今の方が分かります。
そういうものかもしれませんね。それが若かった、ということなんでしょう。もっと語られるべきことがたくさんあった。違う評価をされてしかるべきだった。自分も含めて、あの頃のメデイアとか音楽ライターの力量不足だった、ということなんだろうな、と改めて思いました。
でも、楽しかったです。FM COCOLOのスタッフのご主人が甲斐バンド好きで、82年に出た写真集「1982 BEATNIK」をスタジオに持って来てくれましたし。自分で作ったのに、僕、持ってないんですよ。珍しくスタジオの中にギャラリーがいるという感じだったんで、思い切り力んでしまいました。
4週間で何曲流せたんだろう。8曲ずつで32曲か。「ポップコーンをほおばって」と「破れたハートを売り物に」は時期の違うバージョンで二回流しましたから30曲か。流したい曲の7割は入ったと思います。「そばかすの天使」「昨日のように」「昨日鳴る鐘の音」「荒野をくだって」が洩れたのは残念でしたけど。
自分の番組で甲斐バンドの曲をかけるのは、去年、「LEGEND FORUM」の「ライブ盤特集」で79年の武道館ライブを流したのが初めてかな。やるのなら、他でやらないような徹底したものにしたかったんで、「終活番組」にふさわしい内容になったんじゃないでしょうか。思い残すことがまた一つ、なくなりました(笑)。
もっと語られるべきだよなあ、というところから始まりましたからね。洋楽マニアで甲斐バンドは全く聞いてなかったという60年代生まれのディレクターは終始、「そうだったんですか」「勉強になりました」を連発してました。そういう人に聴いてもらえたらなと思ってたんで、初期の目的も果たせた感じでした。
多分、今までの放送のテンションとは少し違うかもしれないんで、その辺もお楽しみ頂けたらと思います。あれから35年。6月の特集「甲斐バンド」。無事終了しました。あ、もちろん放送はこれからですけど(笑)。というわけで曲ですね。「そばかすの天使」を。じゃ、お休みなさい。