という企画があったんですよ。昨日の話で思い出したというか、改めて書いておきたいなと思いました。思い出話シリーズという感じでしょうか。何しろ今から40年前ですからね。81年の春でした。
そういうコンサートがあったわけじゃないんです。ラジオの企画。TBSラジオが30周年を迎えるんで、当時仕事をしていた、加藤節男さんというプロデユーサーに何か企画だしてみないか、と言われてダメもとで出したものでした。
どんな企画かというと、小室等さん、吉田拓郎さん、井上陽水さんというフォーライフの3人が、マンハッタンの街角を漂流するようにして24時間歌って歩く、というドキュメンタリー。これが通ったんですよ。
すごいでしょう。3人が一緒にニューヨークに行くんですよ。しかも路上で歌うんです。小室さんはそうじゃなかった気がしますけど、拓郎さんも陽水さんも初めてのニューヨークだったと思います。僕は二回目かな。
実際は24時間の歌いっぱなしにはなりませんでしたけどね。グランドセントラルステーションとか、セントラルパークのダコタハウスの前、イーストビレッジ、ハーレム、グリニッジ・ビレッジのディランがデビューしたライブハウスとか。
朝5時から5時まで。場所を変えながらストリートで歌ってゆくんです。最後は自由の女神。全部通したのは小室さんで、拓郎さんと陽水さんは来たい場所に顔を出す。三人揃ったのはダコタハウスの前と、ライブハウス「フォーク・シティ」かな。
ディランがニューヨークに来て注目されるきっかけになったお店ですね。楽しかったですよ。82年ですからね。まだイーストビレッジには放火されたビルの後が残っていたり廃墟のような一角にジャンキーがいたりね。
国連の前でフォークシンガーのピートシーガーに小室さんがインタビューしたり。フォーク・シテイには黒人フォークシンガーのオデッタが出たり。ハーレムは当時、ニューヨークに住んでいた大木トオルさんが案内してくれたり。
ハーレムに行ったのは小室さんだけでしたけど。路上で遊んでいる子供がピストルを持っていたりね。車の中で「あんまりじろじろみないように」と言われたり。でも、ゴスペルシンガーの家でソウルフードを食べながら歌を聞いたりね。
今思えば、TBSはよくお金を出したな、と思いますし。3人もよく行きましたよね。みんな好奇心旺盛だったんでしょう。フォーライフのデイレクターも来てました。ラジオの特番にもなりましたし、ドキュメントライブアルバムも出ましたね。
今までラジオの仕事をしていて一番忘れられない番組ですね。みんなでニューヨークに行けたらラッキーだね、という瓢箪から駒。TBSで一緒に行ったのは拓郎さんの「パック・イン・ミュージック」のディレクターだった舛田武宗さんでした。
ほかにもミキサーの桂田さん、ADのワタ。本名は忘れました。元暴走族ブラックエンペラーのリーダー、現地のコーデイネーターはインガ・オンケンさん。女性ですね。珍しい名前だから覚えてました。
だって4、5日前に入ってロケハンして、駅構内とかは収録の許可をもらいに行ってお店にも交渉して、ですからね。しかもついてすぐに泊ったワシントンスクエアの前の小汚いホテルにデイレクターが現金を忘れてきてしまった。
数百万ですよ。でも、ホテルからの連絡で事なきを得たんです。ニューヨークはいい街だと思った。あの印象は大きかったですね。カードがこんなに普及する前。もし、出てこなかったら大変なことになったでしょう。三か所のホテルに泊まったんですが、全部覚えてますね。
というようなこともあったんですよ(笑)。あのアルバムはCDになってると思います。僕もどっかに写ってるんじゃないかな。ニューヨークは9・11で一変した、という話も聞きますし。コロナでもっと変わったんじゃないでしょうか。
あのアルバム、手元にあったかな。表記としては小室さんのアルバムになっていると思います。曲ですね。小室さんが最後に歌った曲、「長い夢」を。じゃ、おやすみなさい。