という本が先日、発売になりました。書いたのは音楽プロデユーサー、寺本幸司さん。70年代から80年代にかけてのフォークロック、ニューミュージックシーンの中核的制作会社のひとつ、今はなきモス・ファミリーの代表です。
どんな人たちを手掛けていたかは、サブタイトルになったアーテイストが象徴してます。浅川マキさんを世に送り出し、天井桟敷の寺山修司さんと結び付け、アングラの女王として揺るぎない存在にした人。
新宿のフーテンのような生活をしていたリリィを70年代を代表する一人に育て、坂本龍一も加わっていたバイバイ・セッション・バンドをまとめた人。東のキャロル、西のファニカンと呼ばれていたファニーカンパニーの桑名正博をメジャーにした人。
ユイ音楽工房のイルカさんのロサンジェルス録音を成功させて再生させた人。放浪のシンガーソングライター、下田逸郎さんや南正人さんを支え続けた人。年齢は僕より8歳上。70年代のニューミュージックシーンの先鞭をつけた人、ですね。
音楽制作者連盟という団体があるんです。シンガーソングライターやバンドが多く所属している250近い事務所や会社が加わっている団体の原型を作った一人。初代副理事長。彼の回想記。かなり生々しいです。
元々映画を志していたというだけあって、単なる回想記にはなってません。名前の挙がったアーテイストはみんな個性的。時には世の中からはみ出す場面も多々あった人たちと本気でぶつかりあってきたからこそ書けることばかり。
ありがちな手柄話になってません。一緒に泥まみれになって歩いてきた。お気づきの方もいらっしゃるでしょうけど、サブタイトルになったアーテイストは全員故人です。彼らをどんな風に看取ったか、という本でもあります。
売れていようがいまいが、そうやって本気で関わった人は最後まで付き合う。きれいごとでは関わってない。それぞれの人との別れのシーンは胸を打ちます。書きたいことが山ほどあって筆が勝手に動いていると思わせる本です。
アーテイスト人生をどう終えるか。こういう信頼感のある大人と出会えた人は幸せだろうな、と思わせてくれる本でもありました。もう、そういうプロデユーサーとアーテイストの関係というのはないかもしれませんね。
寺本さんとちゃんと話すようになったのは最近なんです。70年代当時は、僕は現場の末端。彼は花形プロデユサーでしたからね。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」が始まってからかな。改めて知ったことが色々ありました。
気取ったことが書いてないし、理論的な本でもありません。250頁、一気に読める本。毎日新聞社出版。音楽本、力作が続いてます。コロナ禍もあるでしょうし、残された時間が長くない、と色んな人が思い始めてるんだと思います。
曲ですね。浅川マキさんかな。彼女がなくなった時の話がドラマテイックでした。桑名さんのことも、ですね。彼のいまわの際での「月のあかり」の話は映画のシーンみたいでした。桑名正博さん「月のあかり」を。じゃ、おやすみなさい。