そういう連載が始まってます。本ではなくてREAL SOUNDという音楽ウエブサイト。基本は小説なんですが、その合間に対談もあります。書いているのは元ALFA MUSICの村井邦彦さんと日経新聞の編集委員、吉田俊宏さん。
どんなお話かというと、ALFA MUSIC設立のきっかけになったプロデユーサー、川添象郎さんのお父様、川添浩史さんの物語。六本木の伝説のレストラン、キャンテイ―の設立オーナー。タイトルになっている「1934」というのは彼がパリに留学した年。
「ALFA MUSIC」は、1969年に24歳になる若き作曲家村井邦彦さんが設立した音楽出版社。個人がそういう会社を作った例はそれまではなかった、という話は先日も書きました。その話の発端になったのが1969年のパリなんですね。
ザ・タイガースを脱退した加橋かつみさんのソロアルバムのレコーデイングで、そのプロデユーサーが川添象郎さんだった。彼が「パリに来ないか」と誘われて、アルバムに曲も書いていた村井さんも遊びに行ったところから始まってます。
フランスの音楽出版社の偉い人に進められて始めたのがALFA。その時に権利を買った4曲の中にあの「マイ・ウエイ」があった。パリでミュージカル「ヘヤー」を上演していて、川添さんが日本で上演することになるという始まりですね。
川添浩史さんというのは象郎さんのお父様。明治維新の立役者の一人、後藤象二郎さんのお孫さんという方。戦前には歌舞伎を海外に持って行ったり、戦後もブロードウエイの「ウエストサイド物語」を日本で上演したプロデユーサー。
彼が1960年に開店したのが「キャンテイ」。そこが、音楽やファッション、映画、演劇、出版と様々な文化の発信地になってゆくわけです。ALFA MUSICもそういう人脈の中で誕生した音楽出版社でありレコード会社だった。
というようなことは基礎知識みたいなものですが、川添浩史さんという方がどんな人物なのかというのはあまり知られていません。その直系ともいえる村井さんが小説としてお書きになっているというのがこの連載なんです。
始まりが1971年1月のカンヌ。川添浩史さんがなくなった一年後。そこから時代が遡ってゆきます。タイトルになっている「1934年」。戦前の日本とヨーロッパ。政治や文化がどういう状況だったか。こういうことが知りたかった、という小説です。
村井さんと日経新聞の編集委員、吉田俊宏さんの共著。小説はち密な取材に基づいていて、連載の合間にはその取材対談も読めるようになってます。細野晴臣さんやユーミンも出てきてます。その話も面白いです。
何でこんなことを書いてるか。明日、ロスの村井さんとリモートインタビュー。FFM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」の5月の特集「ALFA MUSIC」の後半二週。この連載についての話も出ることになりそうです。
戦前から戦後のモダニズム、サブカルチャーの系譜。東京のおしゃれ音楽の拠点と思われていたALFAの思想の原点。ということで、曲ですね。74年にALFAから出た雪村いづみさんのアルバム「スーパージェネレーション」から「東京ブギブギ」を。
服部良一さんの曲を歌ったアルバム、演奏がテインパン・アレイ。アルバムの構想も村井さんでした。じゃ、おやすみなさい。あ、「モンパルナス1934」は、ここです。参考のため。