長いタイトルですけど、数字は読みません。声に出すタイトルは「10years 10songs」。10年間で10曲。その前の数字は2021年3月11日、つまり、今年の3・11。震災から10年の10曲という意味です。
発売も3月11日。震災から10年のアルバム。RADWIMPSは、震災の翌年から3月11日に新曲をYOU TUBEにアップしてきました。2017年だけなかったんですが、それまでに8曲。そこに今年の新曲2曲を加えた10曲です。
一曲目に入っているのが「白日」。2012年3月11日に投稿された曲。前日にメンバーやエンジニアにどうしても明日、演奏してその日にアップしたいと連絡してレコーデイングしたという曲ですね。それから10年の記録です。
「風化させてはいけない」とは今年も震災報道で必ず聞かれた言葉です。でも、人間の記憶であり経験ですから、時間が経てば意識も感覚も変わってきます。そうやって「新曲」として記録された10曲には、その変わり方も感じさせます。
RADWIMPSは、今年は結成20周年、メジャーデビューして16年。初期はミクスチャーバンドという印象がありましたけど、この10年は野田洋次郎さんのヒューマニテイ―が色濃く感じられるようになってきた印象があります。
バンドの作品としての完成度、というより3・11という「時間」を軸にした彼自身と「日本」という状況の「定点観測」。この儚いくらいの優しさや繊細さ、透明な痛々しさがRADWIMPSなんだなあ、と改めて思わせてくれました。
10曲の中には「原発」という言葉が使われている曲もあります。”原発が吹き飛ぼうとも少年が自爆しようとも その横で僕ら愛を語り合う”という「あいとわ」という曲もありました。新曲の2曲は「かくれんぼ」と「あいたい」。
震災でどこかへ「かくれて」しまった友人や恋人、家族。”かくれた”側と”探す”側。10年経ってのそれぞれの気持ちが「あいたい」になっているようでした。この2曲じゃないと10年を語れない、という対になったような曲です。
仕方ないことでしょうけど、3・11が過ぎて震災の報道もめっきり少なくなりました。でも、昨日もかなり大きな地震がありました。まだ余震が来るという地震学者もいるみたいです。全然過去じゃないなあ、と思わされます。
アルバムの特設サイトでは、その年に曲と一緒にアップされた野田洋次郎さんの心境の10年分のエッセイも読むことができます。誰もが感じていたこと、そこまで気づけなかったこと、途方にくれたような思いが生々しいです。もし良かったら。
というわけで、曲です。RADWIMPSの「あいたい」の方を。震災だけじゃなく、コロナ禍での今を歌っているようにも思えます。じゃ、おやすみなさい。