そういう本が出てるんです。この本のこと、前に書いたような記憶もあるんですが、定かではありません。そう、定かでないことだらけです。以前は定かだったことがどんどん定かじゃなくなってる。というような話を書こうとしているわけではありません(笑)。
書いたのは柴那典さんという音楽ジャーナリスト。本のprofileではそう紹介してます。出たのは2014年です。サブカル本の多い、太田出版から出ました。タイトルにあるようにテーマは初音ミク、ボカロですね。
以前、読んだ時も目から鱗が落ちるような気がするくらいに新鮮で、納得した本だった。今回、「MUSIC TIMELINE」のゲストをお願いしようよ思って改めて読み直しておりました。やっぱり面白かったです。
「MUSIC TIMELINE」は、おかげさまでネット局が増えたりしてます。今、27局かな。まだ増えるという話も耳に入ってます。FM局の開局が1969年。去年から今年が50周年ということでこの50年間を毎週、一週ごとに取り上げてます。
その本の話をしようと思ったのは「2014年」なんです。何で2014年かというと、その本が出たのが2014年だった、ということもありますね。自分の中でボカロとはどういうことなのか、という答えが出た年でした。
それまでよく分からなかったんです。否定はしてなかったんですけど、畑が違う、という感じがしてた、見て見ぬふり、というんでしょうか。初音ミクもそうでした。バーチャルなんだろ、みたいに割と冷ややかな感じで見てました。
そういうことじゃなかったんですね。そして、大きかったのは、米津玄師さんがメジャーデビューしたこと。アルバム「YANKEE」が出た。彼は、ボカロに曲を提供していて評判になって自分名義で始めたんですね。
「YANKEE」という意味は「移民」です。バーチャルの世界からリアルの世界に移民してきた、と話してました。彼が作る音楽は、それまでのシンガーソングライターと明らかに違っていた。それがボカロの曲の特徴だと知った。
そして、もう一つ、BUMP OF CHICKENのアルバム「RAY」のタイトル曲を初音ミクと一緒にやってたんです。初めての東京ドームでその曲を演奏した時に、映像に初音ミクが出てました。え、何だこれは、だったんです。
そういうこともあって「2014年・米津玄師と初音ミカ」というテーマにして、柴さんをお呼びしようと思って読み直してました。何が目から鱗だったかというと、ボカロをテクノロジーを使った音楽の「遊び」として位置付けていたんです。
その走りがフォークルの「帰ってきたヨッパライ」だった、と書いてたんですね。しかも、ボカロの開発をしていたのが、1967年のアメリカ西海岸で起きた「サマーオブラブ」というヒッピーのムーブメントの中心人物だったというんです。
アップルの創業者、ステイーブ・ジョブスがアメリカのヒッピーだった話は有名ですけど、その流れです。しかも、ボカロの推進者の中に、何と、拓郎さんのアルバム「青春の詩」のバックをやっていたバンド、マックスのメンバーがいた。
2000年代に入ってエレックレコードを再建したのもその人だったんです。ボカロとエレックのやっていた「唄の市」が重なり合った。「音楽の革命」という共通点があった。そうやって見た時にボカロが全然違う意味を持ってきました。
というような話をどうやって番組でやるか。さっき、台本にしました。収録は明後日ですけどね。というわけで、曲を。初音ミカ「桜ノ雨」を。今ごろですけど、いい曲です。音楽に偏見は無用、ということで。じゃ、おやすみなさい。