”さん”なし、でした。他意はないわけでありまして、ゆずさん、というのは何か変だなと思って書き出したら、こうなってしまった、というだけですね。単なる語呂。字数が合わないとか、その程度のことであります。
昨日、「毎日新聞」の「今月の特選盤」のことを書きましたけど、かなり迷ったんです。ゆずの新作「YUZU TOWN」、宮本浩次さんの初のソロアルバム「宮本、独歩」とASKAさんの「Breath of Bless」という三枚も含んだ中でどれにしようかなあ、と思っての結果でした。
それぞれ興味深いんです。ゆずの「YUZU TOWN」は、タイトルにあるように「街」がテーマ。前作もそうでしたけど、ここ数年大きなテーマの曲、簡単に言えば応援歌的な歌が多かった彼らが、「街」に戻った、という感じのアルバムでした。
彼らの地元の横浜チャイナタウンを舞台にした曲もありますし、初めて東京で路上をやったという公園通りを歌ったものもある。聞いている人の背中を押すんだ、という意志がこもっている、というよりも身軽になってあの頃を思っているようなアルバムだったんです。
宮本浩次さんの「宮本、独歩」は、その逆ですね。エレカシというバンドを30年以上やってきて、初めてソロになった。バンドでは出来ないことに敢然と立ち向かっている、吹っ切ったようにのびのびと歌っている。こんなのキャラクターのはっきりした人なんだ、という発見に満ちてます。
歌の演技力、というんでしょう。椎名林檎さんと去年やった「獣ゆく細道」が良かったんでしょうね。もっとやっていいんだ、ここまでやっていいんだ、と思えたんでしょう。表現を大きくする、大胆に様式化する。こういう男性、いないよなあ、というアルバムでした。
考えてみれば、エレカシの個性も彼の演技力に拠っていたんだな、と改めて思いました。シャイで真っすぐ、武骨なんだけど、どこか人懐っこい。そう言えば、ステージのアクションとかも歌舞伎みたいなところがありましたよね。
ASKAさんの「Breath of Bless」は、彼の自信作でしょう。迷いがない。思ったこと、歌いたいこと、作りたい音楽が凝縮されている。「歌になりたい」という曲もありましたけど、音楽に同化している。去年からのツアーもそうだったんですよ。このツアーのために今までがあった、という気がしたくらいでした。
で、それぞれに魅力的なアルバムがありながら、amazarashiの「ボイコット」にした。やっぱり理由があるんです。ゆずのアルバム特集は、他でやることになってます。宮本さんのアルバムもどこか他で書けそうかなという気もしました。
ASKAさんはNACK5「J-POP TALKIN’」でインタビューもしました。もう一つ、付け加えれば、僕なんかの出る幕じゃない、というか、ちゃんと売れますよ、という感じもしたわけです。amazarashiは、まだ、そこまで行ってないとしたら、ちょっとでも力になれるかな、ということでした。
東京の大手メデイアで紹介されることもまだそんなに多くないでしょうし微力ながら、と思った次第です、というようなことを書く必要があるんだろうか(笑)。でも、音楽のことについて書く場所がどんどん少なくなってますからね。こんなアルバムでした、ということで。
ライブはなくても音楽は聴けます、と自分を納得させるしかありませんね。曲です。宮本浩次さん「昇る太陽」を。今日が初日だったツアーも延期になったようです。いつまで続くんでしょうか。早く、明るい太陽が昇ってほしい。じゃ、おやすみなさい。