というバンドがいます。と言ってもメジャーデビューしてすでに10年目。昨日、3月11日に発売になったアルバム「ボイコット」は、5枚目です。中堅と言っていいでしょうね。一昨年には初めて武道館公演を成功させてます。
「毎日新聞」に「今月の特選盤」というコラムがあるんです。毎月一回ですね。評論家の富沢一誠さんと毎日新聞の川崎浩さん、レコ大の審査委員長ですね。その二人と僕の3人が一枚を選んで書くわけです。締め切りが今日。どうしようかなあと思って、このアルバムにしました。
と言っても僕も彼らへの認識を持ったのは、そんなに古くない。前作なんです。2017年のアルバム「地方都市のメメント・モリ」の時でした。タイトルに惹かれて聞いてみてインパクトを受けました。メメント・モリ、というのは、ラテン語で「死を思え」という言葉ですね。
もう20年くらい前かな。藤原新也さんの「東京漂流」という本の中でその言葉を知りました。Mr.Childrenのシングル「花-Memento-Mori」でも使われてましたね。「地方都市」と「メメントモリ」という言葉の組み合わせが印象的でした。
amazarashiは、作詞・作曲・ヴォーカル・ギターの秋田ひろむさんを中心にしたバンドですね。バンドですけど、アルバムは色んな音も入っていて多重録音ぽくもあります。朗読のような曲があったり、叫びのようであり、ロックバンドのアルバムという括りは出来ません。
僕は行けなかったんですが、初武道館のタイトルは「朗読演奏実験空間 新言語秩序」ですからね。音と一体になった言葉の実験という挑戦的な姿勢もあります。小劇場的というんでしょうか。言葉の緊張感は歌詞は思えないくらいに劇的です。
amazarashiというバンド名は、「僕らは日常の悲しみと苦しみの雨に曝されている」という意味だそうです。秋田さんは、青森在住。地方都市の現実を見据えてきた人でもある。東京からは見えない閉塞された心情が迫ってきます。
タイトルの「ボイコット」というのは、自分を「ボイコット」している相手をどこまで「ボイコット」出来るか、という意味だと思います。偏狭さに負けない意志。「拒絶の拒絶」。笑おうとして笑えない、抗う人の抒情詩。溢れんばかり、押し寄せんばかりの言葉は強烈でした。
無理だろうなあ、とは思いつつインタビューをお願い出来ませんか、と申し込んだんですが、東京に来る予定がありません、とのことでした。アルバムを聞いた限りではインタビュー好きとは思えませんし。でも、機会が来れば話をしてみたい人になりました。
歌詞の中に「私たちの手の中に言葉を取り戻せ」という一節もありました。ロックを通した言葉の生々しさの復権。刺激的でした。アルバムの発売日が昨日、3月11日というのもこだわりでしょう。というわけで、曲です。アルバムのリード曲「とどめを刺して」を。
昨日とは打って変わった黄色い満月でした。同じ時間なのに、何でこんなに違うんでしょうね。星座への知識がなさすぎます。じゃ、おやすみなさい。