場所は渋谷のマウントレイニア・ホール。東急109の駅の出口を出て道玄坂を上がってすぐの右側の雑居ビルの6階。椅子ありです。場所がいいのと雰囲気がライブハウスという感じがなく、ベテラン系アーテイストのライブが多い場所ですね。
で、頭脳警察。椅子ですからね。かなり落ち着いてみることが出来ます。でも、頭脳警察ですからね。ライブハウス級の熱気がありました。先日発売になった10年ぶりのアルバム「乱破」を携えてのライブ。現役感一杯でした。
一部が新作アルバム「乱破」の中の曲。一曲目はアルバムの一曲目「乱破者」。尺八が入るんです。最初にアルバムを聞いた時、盤を間違えたかと思ったくらいに意表をついた始まり。しかも、彼が九つの言葉を唱えている。
臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前という九つ。PANTAさんに聞いたら、小学生の時に父親から「魔除けだから覚えておけ」と言われた言葉だったんだそうです。彼の家紋も星が九つあった。祖先は「忍びの者」だろうと言ってました。
つまり、自分のルーツ。そういう意味で「ここに来るべくして来た、と思う」という始まり。バンドは元黒猫チェルシーというバンドのメンバーが中心。20代。若くて切れのいい演奏と尺八がスリリングでした。
一部がアルバムの曲。そして、二部が何とリクエストランキングで11位までの11曲。自分では絶対に選ばないという曲が並んでました。「銃をとれ」とか「ふざけるんじゃねえよ」とか、72年に発売中止になったアルバムの曲も上位でしたよ。
ただ、一位は90年の「万物流転」という曲。時代が変わって、それでも世の中は何にも変わってないじゃないか、という諦観と無念。客席も50代以上という感じ。投票した人たちも同世代なんでしょうから、そういう心境なんでしょうね。
そういう曲ですからね、懐メロ感が出たら興ざめでしたけど、それがなかった。バンドのエネルギーもあったんでしょうけど、PANTAとTOSHIのスピリットが衰えてないということなんだと思いました。PANTAさん、声出てましたからね。
でも、こういう曲、今、何でないんだろうなあと思ったんですよ。若い人の中の格差や世の中の不条理、不公正みたいなものは、当時よりもひどくなってるように見えるのに、そういう歌が生まれてないように見える。
ラップにはあるのかもしれませんけど、若いバンドやアーテイストはもっと傷つきやすくて優しい。そんな風に叫ぼうという人は送り手にも聞き手にもいないのかもしれないなあ、と思ったりしました。
というようなことは「今の若いもんは」と言ってるのと同じか。そういう人たちの音楽をちゃんと聴いてからにしますね。というわけで、頭脳警察「万物流転」を。じゃ、おやすみなさい。