という映画があるんです。配給はスペースシャワー。CSの音楽専門チャンネル。最近は、音楽のレーベルや映画の製作配給も手掛けてます。音楽畑のよしみということでしょう、映画の試写会の案内状を送ってくれます。
で、今日が試写の最後ですよ、という案内を頂いたのが、「解放区」という映画。2014年に制作されて様々な映画祭で評判になったものの、その衝撃度から一般公開が見遅れていた。今回、5年ぶりに劇場公開が決まった、というものでした。
確かに衝撃的でした。決して楽しい映画とは言えないんでしょうが、単に考えさせられる、シリアスというだけではない。フィクションだけどドキュメンタリーのようでいて、かつストーリー展開に引き込まれてゆく。すさまじい映画でした。
むしろドキュメンタリーのようでありフィクション、と言った方がいいかもしれません。フィクションという見方はしてなかったです。その境目や限界に挑戦したような映画。もし、ドキュメンタリーだとしたら、どうやって撮ったんだろう、と思って見てましたからね。
テーマの一つはドキュメンタリー。主人公がそういうドキュメンタリー番組のAD。将来はドキュメンタリーのデイレクターとして一本立ちしようとしている。でも、どうしようもないダメな奴。それがいい味なんです。
それはもう腹が立ちそうになるくらい。そんないい加減さでドキュメンタリーが撮れるわけないだろう、と言いたくなる。彼が務めているという制作会社のデイレクターも、上っ面だけ追いかけているだけの最悪な奴。ステロタイプのテレビのドキュメンタリーへのパロデイのようにも見えました。
引きこもり、統合失調症の元ボクサーを題材にしようと撮影してるんだけど、そのやり方も最悪。今時、こんなやついるのか、という感じ。でも、どっか絵に描いたようなんです。そのADが、自分の手柄欲しさに大阪の西成に行きます。
その辺から展開がリアルになった。西成区というのは東京の山谷と並んで日雇い労働者の街。映画の中の言葉を使えば「どん底」。そのADは、腰も座らぬまま西成に入り込み深みにはまって、人として最後の一線も越えようとする。
西成区とそこにうごめている人の実像。現地に入り込んだからこその風景や日常的で人間的なやりとり。ドキュメンタリーでは撮れるはずがないようなリアリテイ。こんな終わり方があるのか、という感じでした。
大阪府から助成金が出たそうなんですけど、完成したものを見て助成金返還と修正を要求してきた。でも、監督は修正を拒否して助成金は返した、といういわくつき。太田信吾監督は35才。主演も脚本も兼ねてます。低予算映画です。
と書いたものの、「感動的です、ぜひ」とはなかなか言いにくけれどドキュメンタリー好きは必見。こういう映画を身体を張って撮ろうとしたクリエーターもいるんだなあ、ということはお伝えしたいと思いました。
というわけで曲ですね。岡林さんのこの曲が牧歌的に思えました。「山谷ブルース」を。じゃ、おやすみなさい。