一昨日ですね。出来ればその日終わってからすぐに書いた方が気分的にも新鮮なんですが、なかなかそうはいかない。寝るのが遅くなるのもしんどいし、色々雑用もあるし、タイミングを逃してしまったりするわけですが、ってごちゃごちゃ言ってますが(笑)。
去年の9月から始まった「TIME MACHINEツアー」。3月の6公演があまりにチケットが過熱してしまって、15,16日に組まれた追加公演。ツアーファイナルでした。前回の「宇宙図書館」もファイナルを見せてもらえたんで、幸運が続きました。
どんなツアーでもファイナルにはやる側はもちろん、見る側にも特別な思いがありますからね。しかも、今回のツアーは「Travelin through 45 years」というサブタイトルがついている。つまり45周年の区切りとなるベスト盤的ツアーなんで、なおのことでした。
選曲が2012年の「日本の恋と、ユーミンと」と2018年の「ユーミンからの恋のうた」の中から。つまり全編が彼女のキャリアを網羅したラブソングばかり。しかも、45年間に積み重ねてきたツアーの集大成にもなっている。丸ごと45年分。すさまじかったです。
日本のコンサートの歴史で彼女ほど功績のあるアーテイストはいないでしょう。名実ともにコンサート史そものもの。特に”どう見せるか”というエンターテインメント的演出面では圧倒的。その片鱗が全編に取り込まれてました。
ステージに象が出て来たりエレベーターが設置されたりエスカレーターが登場したり、プールが作られてシンクロナイズドスイミングやアイススケートが導入されたり、究極の形が、サーカスと合体した「シャングリラ」ツアーでした。
そういうステージングになったのは、まだコンピューターもない80年代の初めでしたからね。機材やテクノロジーの進歩がそのままステージの歴史に重なってます。そういう色んな時代の演出を再現しながらのライブ。名場面集と言って良いでしょう。
それだけ時代の違いが一つのライブになるわけですからね。当然、ファッションも変わるわけです。それが、彼女がやってきた音楽の幅に広さ、バラエテイの豊かさにつながっている。一曲一曲が曲の世界として完成されている。お見事としか言いようがありませんでした。
だって、象と宇宙遊泳と空中ブランコが一つのライブになってる。それも彼女だけじゃなくて、幻想的な映像も全員のダンスも一瞬の早変わりも、そしてもちろん演奏も、一糸乱れぬタイミングで進行してゆく。武道館が文字通り時空を超えた空間になってました。
そう、ステージがセンターステージで360度に客席がある。そうした作り自体はもう珍しくないですけど、360度の客席にあたる照明がステージと一体になっていた。あんなに武道館の構造が美しいと思えたコンサートは初めてかもしれません。
最終日ですからMCも感慨ひとしおという感じ。随所に45年を総括するような発言も多かったです。「もともとソングライターになりたかったんで、デビュー当時は歌に自信がなかったから見せるライブにチャレンジした」、みたいな話がありました。
歌に自信がなかった、と言いながら、ピアノの弾き語りはオープニングだけ。後は全部歌に専念。ヴォーカリストでした。歌、力強かったです。ここまで来た。だから「自信がなかった」と言えるもかもしれません。
色んな感動的なシーンが続いた中でも格別だったのがダブルアンコールの「やさしさにつつまれたなら」。客席の大合唱。良かったです。個人的な出会いの中でもあの曲が決定的でしたから。それまでの音楽と全く違う感受性に教えらた気がした曲でした。
何が、というと、あの曲の中の”目に映るすべてのものがメッセージ”という一節。それまでに持っていた”メッセージ”という概念と全く違う”ものの感じ方”が言葉になってると思ったんです。発するものではなく”受け止める”ものとしての”メッセージ”というんでしょうか。
空の青さも木々の緑も、目に映るものすべてがメッセージなんだ。フォークの”メッセージソング”とは全く違う感受性。目から鱗でありました。自分の中の70年代の新しい歴史があそこから始まってるような気がします。というようなことも思い出したり。
ともあれ、素晴らしい武道館でした。お疲れ様でした。というわけで、改めて、この曲を。「やさしさに包まれたなら」。じゃ、おやすみなさい。