いきなりなんだ、でしょう。今までここに出て来たことがありませんからね。ここだけじゃなくて、インタビューもしたことがありません。そういう意味では全くと言って良いほどご縁がなかったですね。
何で彼女のことを書いているかと言うとスタジオジブリの機関誌「熱風」でやっている「風街とデラシネ~作詞家松本隆の50年」という連載で触れるんですね。1969年から初めて今度は1975年。彼女のアルバムが三枚出てるんです。
「まごころ」「短編集」「心が風邪をひいた日」という三枚。どれも彼女が書いたもの以外は全部松本さんです。「木綿のハンカチーフ」は三枚目に収録されてます。作詞家としての出世作と言って良いでしょう。で、改めて聴いておりました。
良いアルバムなんですよねえ。特に一枚目の「まごころ」。彼女にとってもデビューアルバム。松本さんにとっても初めて全面的に取り組んだアルバム。素敵なトータルアルバムでした、って、今ごろ気づいたのか、でしょう。
そうなんです。今ごろ気づきました。西城秀樹さんもそうでしたけど、当時、触れようとしなかった音楽がかなりあったんですね。彼女もその一人でした。75年ですよ。フォーライフレコードが出来たり、拓郎さんの「つま恋」があった年。
色んな事があったんです。キャロルの解散とかキャンデイーズの解散、かぐや姫もそうでした。みゆきさんの「時代」とかユーミンの「あの日に帰りたい」。シンガーソングライターとバンドに関心が集まっていた。
そういう時代に「まごころ」というタイトルがどう響いたか想像してみてください。彼女は渡辺プロでしたし。素通りという感じだったんです。時代のせいにしれはいけませんけど、改めて聴きながら、もったいないことしたなあ、と思ったりしえました。
きちんと音楽に向き合ってなかったのかもしれませんね。”時代”という上っ面だけ見て分かったような気になってた。色んなことを置き忘れてきた、拾い損ねてきた。そうやって生きてきてしまったのかなあと思ったり。
初期三部作。75年にこんなに丁寧に作られたアルバムがあった、ということを当時の状況を踏まえつつ書こうと思っております。でも、こっからが大変。原稿に行くまでにあれこれを調べなおしたり確認したり。そういう作業がほんとに時間がかかってしまいます。
さっき、調べたよな、という曲名とか人名が全く出てこない。そういうことだけでどんどん時間が経ってしまう。これ、いつものぼやきですね(笑)。令和というのはそんな忘れ物探しの時間になるのもしれません。
というわけで、太田裕美さんのデビュー曲「雨だれ」。アルバム「まごころ」にはReprizeバージョンが入ってました。クラシックのような品のある抒情が素晴らしいです。じゃ、おやすみなさい。