今朝ほどは失礼しました。お騒がせしました。ま、こういうこともある、ということで。昨日書こうとした宇多田さんのライブです。少し時間が経ってるんで温度感が低くなってるかもしれません。多少、疲れていても帰ってきてその場で書くべきなんだろうなとか思いながらです。
ともかく良いライブだったんです。素晴らしいとか、よく出来ていたとか、完成度が高かったとか、色んな言い方がありますが、全部をひっくるめて良いライブでした。彼女にしか出来ない、彼女にしか歌えない、彼女だからこそ歌えるという歌。感動的でした。
無垢なもの、汚れ無きものに触れた時に感じる敬虔な感動というんでしょうか。誰かのために歌っているわけでも何かのために歌っているわけでもない。お客さんを喜ばせようとか、良いライブをしようという次元じゃないように思えた。
もちろん、良い歌を歌うことに徹していた。でも、それが技術的なこと技巧的なことを意味しない。あのふるえるような艶のある声とどこまでがメロデイなのか判別のつかない細やかで泣いているようなフェイク。壊れそうに美しかったです。
照明や演出もそう。計算とか効果、みたいなことを考えてない。むしろ、そういうことをしないことに徹しているように思えました。演奏もそうかな。これ見よがしにならずに歌を支えて歌と一体になるという抑制された高度な演奏。それが気品、精神性になってる気がしました。
あざとさの欠片もないコンサートというんでしょうか。ポップミュージックというのは聞き手を意識した音楽でしょう。ポピュラリテイ、ですから。大衆性。確かに客席が一緒に歌えるわけですからポップミュージックなんです。でも、コンサートはアートでした。
ポップスとアート。分かりにくいかもしれませんけど。こういう例だとどうでしょう。小説で言うと直木賞と芥川賞。ポップスが直木賞だとしたらアートは芥川賞。質で言うと芥川賞なんだけど、直木賞のような広がりを持っている。純粋芸術としてのポップミュージックという感じでしょうか。
客席も大きかったと思いますね。びっくりしたのは初めて彼女を見るという人が7割くらいいたことでしょうね。もっと多かったかもしれません。初宇多田ヒカル。彼女がどういうステージを見せてくれるのか知らない。音源でしか聞いたことがない。
その分、緊張感がある。なあなあな感じにならない。掛け声もそんなに飛ばない。全神経を集中させて「これが生の宇多田ヒカルか」という感じで聴いている。終わった後の拍手が「これが本物なんですね。感動しました」という感じに聞こえました。
終演後、拍手が鳴りやまないんです。惜しみない拍手。クラシックコンサートのよう、と書くとクラシックが上でポップスが下、みたいに思われそうで躊躇しつつではあるんですが、純粋に賞賛の拍手という印象でした。
心に残ったコンサート。会場を出てからなぜかわからないけど涙が出そうになりました。こみあげる何かがあったんでしょうね。エンターテインメントを超えたコンサート。でも、エンターテインメントなんです。良いものを見ました。
何だか別格という感じかな。天才というのは、誰にも真似ることの出来ないことをさりげなくやってしまえる人を言うんでしょうけど、ライブパフォーマーとしてもそうなんだなあと再認識させられました。
何年ぶりだっけ、「人間活動」の休止以来。8年前か。あの時の横浜アリーナも拝見しましたけど、明らかに違う領域に達していると思わせてくれるライブ。ツアーは明日と明後日で終わりかな。こっから何かが始まるんでしょう。
というわけで、曲ですね。アルバム「初恋」から改めて「初恋」を。じゃ、おやすみなさい。