という映画が公開されます。昨日、試写会でした。意外と言っては失礼ですけど、試写室は見事に満席でした。音楽ドキュメンタリー。よく出来てましたよ。一つのバンドと一つの時代。日本ではあまりないタイプの作品と言っていいかもしれません。
大きな柱は二つですね。一つは去年の大晦日をもって幕を下ろした新宿のライブハウス「JAM」。80年にオープンして37年。パンク系やガレージバンドと呼ばれる人たちにとっては登竜門でありメッカだったというお店です。
もう一つのテーマが87年にインデイーズデビュー、去年30周年を迎えて初の武道館公演を行ったTHE COLLECTORS。最初のステージが新宿JAMだったと言ってましたね。そこから巣立っていった彼らが、閉店にあたって行った一夜だけのライブを舞台にした物語です。
THE COLLECTORSは、60年代のロンドンの音楽とファッションが一体になった”モッズ”に影響されて誕生したバンド。もはや、発祥地のロンドンにすら存在しなくなってしまったムーブメントの夢を追い続けているモッズ一筋のバンドですね。
モッズルック、と言ってもご存じないでしょうね。「さらば青春の光」という映画がありました。特徴はミラーを派手にデコレーションしたスクーターと”モッズコート”と呼ばれるカーキ色のミリタリーコートに細見のスーツというファッションですね。
音楽で言うと、ザ・フーとか、キンクス。ビートルズよりももっとタイトなロックンロール。パンクが登場する前のロンドンの”怒れる若者たち”のロック、と言っていいでしょう。”モッズ”が”パンク”につながって行ったとも言えそうです。
日本にはザ・モッズというまさにそのものの名前のバンドもいます。80年代の九州から生まれた”めんたいビート”に影響を与えたムーブメントでもありますね。というような”モッズ解説”も映画の一つのテーマになってました。佐野さんのコヨーテバンドにも同質のものは流れてますね。
でも、正直に言いますが、THE COLLECTORSは縁がなかった。ライブは90年当時かな新宿の日清パワーステーションで見てるんですけど、インタビューはしたことがありません。だからどうした、ということではなくて事実ですからね。
同じ頃のバンド、ミシェルガン・エレファントやフリッパーズ・ギターは結構見てるんです。これはもうしょうがないですね。その頃は、そこまで肩入れしようと思わなかったんでしょう。なぜそうだったのかも映画を見て分かりました。
軽かった、というか、おしゃれだった。モッズというよりネオGSみたいに見えていた。反抗的な怒れるモッズというよりおしゃれモッズ、という感じだったんでしょうね。彼らの中にある”憧れとしてのモッズ”に気づけなかった。
リーダーの加藤ひさしさんが、JAMが閉店する、ということについてなつかしさはない、と言ってたんですね。つまり、「ロフトに出られなかったからここだった」という関係。それが逆に消えてゆくライブハウスへの惜別にふさわしく思えました。
僕も年を取ったということもあるんでしょう、彼らのおしゃれさは今の方が分かる気がした。加藤さんは、なぜか今が一番忙しい、という言い方もしてました。そうやって理解されてゆくバンドもあるんだなあ、という意味でも興味深いドキュメンタリーでしょう。
スーパースターを追ったものでもサクセスストーリーでもない。新宿の片隅の小汚いライブハウスだからこそのドキュメンタリー。ロックファンにはぜひ、という映画でした。東京の公開は11月23日から12月6日まで新宿ピカデリーです。
というわけで、曲ですね。映画の主題歌、THE COLLECTORS、「明治通りをよこぎって」を。じゃ、おやすみなさい。