どうでもいい話です(笑)。渋谷の駅で拾ったんですよ。裸の一万円札。井の頭線の改札のホーム側、スイカをタッチしようと思って何気なく目を落としたら、そこにありました。一瞬、いたずらかも思って足を止めて周りを見たんですが、誰かが見ている気配もない。
どうしようかと思いました。時間もなかったし、そのまま行ってしまおうかとも思ったんですが、それも何だしと思って拾ってみたものの、さあ、どうしようと。
持って行っちゃおうかとも思ったんですよ。以前、やはり渋谷の改札で一万円を落としたことがあるんです。その時は、自覚症状というか、あれ、落としたなという感覚があったんですね。そうしたら、僕の横を若いカップルが、逃げるように追い越して行ったんです。
女の子の方が「行っちゃえ行っちゃえ」と笑って言ってるようにも聞こえたんですね。男の子の方が「ラッキー」と言ったようにも思えた。つまり、後ろで落としたのを見ていて、そのまま拾って追い越して行ったんでしょう。
その時のことがあったんで、行っちゃおうかなとも思ったんです。そう、その時、電話中だったんだ。相手に、今、目の前に一万円札が落ちてる、と言ったんですね。そうしたら、彼のリアクションが「届けましょう」だったんです。
そう言われて持ってゆくわけにもいかないし。みんなはどうするだろうと思って携帯で調べました。「一万円札を拾った時、どうしますか」。どういう割合だったか。”見なかったと思ってそのまま行く”が2割、”拾って自分のものにする”が3割。半分が「交番に届ける」でした。
だったら届けようかと思って交番に持っていきました。あの渋谷のハチ公前交番。今、どこも立派になっていて、中にはその街で一番立派な建物になってるんじゃないかという警察が多い中で、あそこは素朴な交番ですね。
道を聞いたりしたことはありますけど、中に入るのは初めて。田舎の交番みたいな雰囲気。ここがあの海外に名高いハチ公前交番、と思うとなんだか微笑ましい感じもありました。と言っても警察は警察ですから、居心地がいいとは思えなかったですけど。
ただ、手続きに時間がかかったのは誤算でしたね。もし、落とし主が見つかったら、どうするかとか、お礼の権利はどうしますか、とか。同意するとかしないとか、いちいち書き込んでゆく。予定の時間に遅れそうになりました。
そうだ、「本当にいいんですか」と何度か聞かれたのが、落とし主に電話や住所などの連絡先を教えることに同意するかどうか、だったんです。僕は「いいですよ」と言ったのが意外だったみたいなんですね。
「電話番号や住所をその人に教えるんですよ、ほんとにいいんですか」。あんまり聞かれるんで、じゃあ、同意しないにします、にしたんです。もし、拾った人が連絡してきたら、面白いかなと思ったりしたんですが、そういうことじゃなかったみたいです。
ねえ、面白いじゃないですか。その連絡から何かが始まることがないとも言えない。拾った一万円札から恋の花が咲く、みたいな。そんなことあるわけないですけど(笑)。でも、そういう時代じゃなないみたいでした。
どうでもいい話だね(笑)。というわけで、東京も雨空、湿っぽい一日でした。大雨に見舞われている地方の方のご無事を願ってます。曲ですね。拾いものの歌。ありますよ。「どうせ拾った恋だもの」。コロムビア・ローズという人が歌ってました。じゃ、おやすみなさい。