・という映画があるんですよ。あの大ヒットテレビドラマとも大瀧詠一さんの名アルバムとも関係ないです。洋画です。この間、「旅するソングライター」の上映館情報を探していて目にした時に、これ、見たいなと思っておりました。
・上映期間が今週、明日までということなんで行ってきました。一日一回、10時45分からなので、2時からインタビューに間に合うなと午前中の始動でした。新宿の「角川シネマ新宿」という座席数56というこじんまりした映画館でした。
・ご存じないでしょうねえ。昔、新宿に「シネマ新宿」という映画館があったんですよ。新宿三丁目のビルの地下。映画館とは呼べないような小さなスクリーン。それでも名画座として結構人気のある映画館。ゴダール監督の「気違いピエロ」とか見た記憶があります。
・今の「シネマ新宿」は場所も建物も変わってましたけど、雰囲気はありましたね。試写会みたいな小さな画面とこじんまりした座席。まさに名画座の雰囲気。新宿にもこういう場所が残ってるんだね、という感じでした。
・映画の話しにならないね(笑)。で、作品ね。主演はヘレン・ミラン、ドナルド・サザーランドというアカデミー賞常連大ベテランの演技派女優と男優。夫婦役です。旦那さんはもう退職している大学教授。ヘミングウエイの研究者。彼は認知症が進行中なんですね。
・奥さんの方は入院治療を拒否している末期がん患者。彼女もヘミングウエイが大好き。その二人が人生最後の旅として若い頃に使っていたキャンピングカーでヘミングウエイの舞台となった街を回って、聖地フロリダを目指すという物語なんです。
・ドナルド・サザーランドは今、82才かな。ヘレン・ミランは72才。映画の中でもそういう年齢の夫婦でした。でも、認知症と末期がんですからね。日本だとかなり深刻な物語になりそうですけど、そこがアメリカ映画かな。
・キャンピングカーも日本のそれとは違って相当に大きい。夫婦二人がベッドで横になれるわけですからね。それを認知症が進行中の老人が運転する。危険もあるわけです。そういうシーンがユーモアを感じさせる。そこが役者の演技でしょうね。
・側にいる奥さんの名前も思い出せなくなったり、失禁もしたり。でも、「老人と海」は暗唱できる。奥さんは二人の記憶を呼び戻そうと、キャンプ場で即席スクリーンを作って二人の思い出をスライドショーにして見せる。
・そうやって若い頃からの二人の憧れの地だったヘミングウエイの住んでいたキーウエストに向かうわけです。途中、パンクしてしまった時にチンピラに身ぐるみ剥がされそうになったりというハプニングがあったりね。
・最大の山は記憶が錯乱してしまった旦那が奥さんを昔の恋人と間違えてしまったりね。最後の旅で隠し続けてきた浮気がばれてしまう。激怒した奥さんは彼を近くの認知症患者のホームに放り込んでしまう。そこをどう許すか。演技派女優の真骨頂でした。
・旅の進行が二人の人生を明らかにしてくれてゆくわけですね。ロードムービーですよ。でも、そういう二人です。痛々しくもあり涙ぐましくもあり微笑ましくもある。途中、トランプ大統領の集会と遭遇したり。そこはかなりタイムリーでした。
・流れているのは70年代初めのアメリカンロックですよ。何度かあの「イージーライダー」を思い出しました。あの時は男同士のバイク旅でしたけど、今回は、老夫婦の人生最後の旅。でも、アメリカだなあという感じでした。
・結末は言いません。二人は最後どうなったのか。どんな旅の終わりを選んだのか。これも日本映画だったらもっと重くなったでしょうね。まあ、日本にはそういう“ロード”という概念が生活の中にありませんからね。そこが少しリアリテイの足りなさを感じさせましたけど、“終活ムービー”という意味では異色じゃないでしょうか。
・“終活ムービー”ね。今、ふっと浮かんだんですよ。良い言葉だな(笑)。どんなに終わるのか。そろそろ他人事じゃないです。去年も同年代の友人が何人もガンでなくなりました。そのうち認知症も加わるでしょうからね。と言っても映画みたいには行かないでしょうね。
・ということで、こんな映画がありました。そういう年齢じゃない方には面白くも何ともない映画かもしれません。曲ですね。この曲のことは前にも書きましたね。ミスチルの「あんまり覚えてないや」を。2月、終わりました。明日から3月。良い月になりますよう。じゃ、お休みなさい。