・良いタイトルでしょう。「旅するミュージックライター」に匹敵する、しないか(笑)。そういう映画が公開されます。今日、試写がありました。映画と言ってもハリウッドで制作されるような大がかりなものじゃありません。フィルムの16ミリ、時間は52分という短編。ドキュメンタリーです。
・どんな内容かというとタイトルの通りです。ジョー・バザドさんというレコードコレクターのお話。実在です。アメリカのレコードコレクター。今、81才。大学のラジオ局や三つのAM局で番組を持っているという方。その人のコレクションやレコードに対しての徹底したこだわりを追ったものです。
・さすらい、ですよ。彼が集めているのは1920年から30年代にかけてのアメリカのフォークソング、ブルース、ジャズのSP盤。つまり78回転レコード。これを探して全米を旅しているというさすらい人であります。
・20年代から30年代。アメリカは「怒りの葡萄」というスタインベックの小説や映画になった大不況時代。その直前の時代に生まれたそれらの音楽のSP盤。世界最大のコレクター。発掘した古いレコードやテープを再録音し直したりしているという制作者でもあります。
・いわゆるルーツミュージックの研究者,コレクター。SPレコードですからね、もうどんなものが知らない、見たことがない、という方の方が多いでしょう。ドーナッツ盤が誕生する前。ロックンロール誕生以前。ロックンロールのルーツということになります。
・でも、そういう新しい音楽に対しては徹底して否定的。原理主義。ロックがアメリカだけじゃなくて世界の音楽を駄目にした。それぞれの国の民族的な音楽を壊滅させたという持論。それは共感しないわけでもないんですね。
・しないわけでもないってか、回りくどいね(笑)。あそこまでルーツミュージックを愛し、手作りで作られたSP盤への情熱を注ぐということに対しての共感も敬意も感じます。大瀧詠一さんの兄貴分みたいな存在でしょうし。
・エルビス・コステロは彼のことを「あらゆる音楽の魔法のような響きをただただ愛している最高のレコード・コレクターだ」と言ってるんだそうです。そう如何に愛してるかを追った映画ですね。
・そうなんだよなあ、やっぱりアナログ盤だよなあ、とか。こっから色んな音楽が生まれたんだなあとか、音楽史というよりアメリカ文化史、アメリカはこういう歴史があって良いなとか。色んな発見もあります。
・ただ、僕はエルビスプレスリーや50年代以降のロック、ロックンロールは大好きですから、あそこまで否定的にはなれませんけど、彼のように音楽と一体に暮らせたらどんなに幸せだろうなという意味で、愛すべき、尊敬すべき、羨むべき人でしょう。誰から頼まれたわけでもない。自分が好きだから、という一点に生きている。過激なアナログジジイね(笑)。
・ここ数日の話しの流れで言うと、老後の参考になります、でしょうか(笑)。映画を才策したのはイギリスで一度DVDにもなったようなんですが、廃盤。今回の映画館公開になったようです。試写室、満員でしたよ。
・日本でどこまで見られるか。多分、ルーツミュージックの好きな人じゃないと知らないアーテイストばかりでしょうけど、聞けば何かを感じる、とい曲ばかり。60年代、70年代の日本のフォークに関心のある方は是非、という映画。公開は4月21日から、新宿K’s cinemaです。
・彼の家のコレクション、立派でした。日本であそこまでのライブラリーを持てる方は少ないでしょう。あんな大きな家に住んでる人は都会にはいません。実を言うと、僕も、自分のCDをどうしようか二年前から色々考えてるんですよ。その話はする時が来ると思います。
・というわけで、さすらいのレコードコレクターに捧げる曲。はしだのりひことシューベルツ「さすらい人の子守唄」。ジョー・バザードさんはこれっぽちも疲れたようには見えませんから全然意味が違いますけど(笑)。
・明日は「J-POP LEGEND FORUM」浜田さん特集の二週目の収録。一週目の板屋監督に続いて、ライターの古矢徹さんがゲストです。じゃ、お休みなさい。