・という本があるんですよ。そうじゃなかったら、二人とも呼び捨てにはしません。というか、出来ません(笑)。中川右介さんという方がお書きになった本。これが面白かったんです。タイトルにあるように二人の作詞家の比較ですね。
・前にも書きましたけど、FM COCOLOの「J-POP LEGEND FORUM」の1月特集が松本隆さん。彼が全編詩を書いたクミコさんのアルバム「デラシネ」を入り口に松本さんの47年の作詞家生活を辿ろうという一ヶ月。5週なんですね。
・1回目の収録の後に松本さんが「読んでみて」と教えてくれたのがこの本でした。本の対象になっている方から教えられるというのは不勉強のそしりは免れず、お恥ずかしい限りなんですが、速攻で読み終えたわけです。
・新書版ですからね。そんなに時間はかかりません。しかも、年表を追うような形で二人を比較しているんで、分かりやすい。登場する曲のタイトルも誰もが知っている曲ばかりなんで、口ずさみながら読めてしまう。面白い本でした。
・こういうやり方があるんだ、という感じもしましたよ。盲点を突かれたというんでしょうか。大半の記述が年表とランキングと売り上げ枚数。数字が多い。何年に出て、チャートは何位でどのくらい売れたかがこれでもかと出てくる。
・その時、阿久悠の書いた曲は何位で松本隆作品はどうだったか、みたいな比較。私情をほとんど挟まない。解釈を深追いしない。極端に言えば、どっちが勝った、みたいなことで綴って行く。それが面白かったんです。
・年表物語というんでしょうか。それが盲点に思えたわけです。僕もそうなんですけど、そういうノンフィクションの人が誰でも思う、年表の向こう側にあるものに迫ったり、そのドラマを浮き彫りにしようとかはしてない。もっとドライなんですね。
・時代なのかなあと思いましたよ。音楽に思い入れをしない。カラオケで歌えばそれでいいじゃん、という楽しみ方を踏まえつつ論を進めてゆく。そこに踏み込まないわけじゃないんです。阿久悠さんと松本さんの作風や生き方の違いを簡潔に的確に指摘している。
・中川さんという方は1960年生まれかな。僕よりもかなり下ですね。70年代から80年代がまさに青春という世代ならではのこだわりもあったりします。膨大なデータや資料を駆使した書き方は、元編集者というキャリアを感じさせました。
・偶然だなあと思ったのは、僕の「ビートルズが教えてくれた」を出してくれたアルファベータ出版は、元々は彼が設立した会社でした。経歴を見ていたらクラシックの本が多いんで、遠い存在という感じでしたけど、一気に親近感が出てしまいました(笑)。
・そういう意味では刺激になった本でした。色んな人が音楽のことを書く、それが売れる。この本は相当、売れてるみたいです。ネガテイブなことは色々ありますが、来年、頑張るぞ、という気にさせてくれる本でした。もし、ご興味あれば。結構、悔しい本ですよ(笑)。
・というわけで、一段落して何だか、緊張感が抜けてしまってます。今日、何したんだろうという一日。片付けは手がつかないままでした。こうやって年を越すんでしょう。それ、いつもと同じじゃんね(笑)。
・「LEGEND FORUM」の松本さん、かなり面白いと思います。まだ後半は年明けの収録なんですが、「これ、歴史的なインタビューになるよ」というのが彼の途中までの感想でした。僕もそう思ってます。1月1日が1回目です。
・曲ですね。「J-POP TALKIN‘」の先週と今週のゲストがクミコさん。彼女のアルバム「デラシネ」から「砂時計」。松本さんならではの詩とつんくさんの曲が素晴らしい。じゃ、お休みなさい。