こちらは再び、ですね。去年の11月にTHE TIMERSのスペシャルエデイションというCD・DVDの3枚組が出ました。それに合わせて、シンコーミュージックの「ロックジェット」という雑誌で特集をやるというので、原稿を書きました。
THE TIMERSというのは、忌野清志郎さんが88年に組んだ覆面バンドですね。全員、土木作業員の格好をした覆面バンド。本名も経歴などの正体不明な4人組。世の中の不条理や不合理を辛辣に、それでいてユーモラスに歌ったバンドでした。
RCサクセションのアルバム「COVERS」が発売中止になったことはご存じですよね。アルバムの中の「サマータイムブルース」と「ラブミーテンダー」が、反原発ソングとして親会社の東芝から難色を示されて、「このアルバムは素晴らしすぎて発売出来ません」という意味不明のコピーとともに中止になりました。
その年に誕生したのがTHE TIMERSですね。メジャーが駄目ならというんでインデイーズ。国会議員や政治家、税金などに対しての素朴な疑問がストレートに歌われている。元々RCサクセションには、そういう要素もあったんですが、それが全面に出たバンドでした。
当時、インタビューしてるんですよ。シンコーミュージックの「SHOUT」という、短命だった雑誌なんですが、そのインタビューと、彼らの学園祭のルポが再録になるということで依頼が来ました。依頼、というより再録の許可が欲しい、という感じでした。
そのインタビューは自分でも読みたかったんですよ。ああいうのは今までに最初で最後というインタビューでしたからね。しかもすぐに休刊になってしまった雑誌で手元にもなかった。そのインタビューを改めてどう思うか、そして、THE TIMERSはどんなバンドだったのか、というのを書いてました。4000字くらい。そんなに長くないですね。
どんなインタビューだったかというと、覆面バンドですからね。何も明らかにならないインタビュー。普通は、”本当のこと”に迫るのがインタビューの趣旨なのに、そこに触れないという前提でやりとりしている。
それがプロレスみたいだったんですよ。その代わり、普段は聞けないシリアスなことも聞いている。清志郎さんもRCとしてだったら答えないだろうことを答えている。それが、逆に清志郎さんらしい、というインタビュー。今だったら、掲載されないだろうなあという感じでした。
彼が求めたものは、一言で言ってしまえば”自由”だと思うんですね。”問いかける自由”と”それを歌う自由”。そこに徹したバンドがTHE TIMERSだったんじゃないでしょうか。というようなことを書いてました。
原稿は何とか書いたんですが、でも、ちょっと熱っぽくて、行こうと思っていたライブは自粛してしまいました。ドタキャンごめんなさい、でした。というわけで、THE TIMERS、CD未収録「原発賛成音頭」。DVDになったライブで歌ってました。高田渡さんの「自衛隊に入ろう」みたいでした。
RCの「COVERS」とTIMERSから30年目。今年になって東芝が大幅赤字のために原発事業から撤退というニュースがありました。清志郎はどう思っているでしょうね。じゃ、お休みなさい。