良かったですねえ。初のドーム・スタジアムツアーの最終日。ドームは名古屋で見ました。ライブは一期一会ですし、同じツアーでもそれぞれに良さがあったりするわけで、単純な比較は出来ませんけど、あの時よりも完成されている印象でした。
ファイナルですからね。各会場での経験も生かされているんでしょう。音も自然で、ことさらに屋外を強調している感じもありませんでした。バンドのそれぞれの音や、藤原基央さんの声のデリカシーも損なわれずにきれいに届いてたんじゃないでしょうか。
野外が似合ってました。彼らの曲には空とか宇宙とか天体が舞台になったものも多いですし、情景にしっくり来る。メンバーもそんなシチュエーションに入り込んでいる。初日産スタジアムという力みも気負いも感じなかったです。
良かったですねえ、というのは、そういう歌や演奏、音の伝わり方など色々ありますけど、何と言っても会場の”空気感”というんでしょうか。盛り上がったとか、すさまじい熱気だったとか、そういう質のものじゃないんですね。
日産スタジアムは何度も行ってますけど、ある意味ではあんなに穏やかなライブはなかったかもしれない、という感じ。穏やか、というのは的確かな。言葉が難しい。安心感がある、というのも違うか。心理的な距離感といえば良いのかもしれません。
ロックバンドですから、”おとなしい”わけではないんですよ。照明もふんだんに使われてますし。でも、音量とか音圧で勝負しているという感じでもない。むしろ、繊細さをどう伝えるかに神経が使われている。客席の反応もそうだったんですよ。
7万人の大観衆、という感じじゃないんですね。もちろん大観衆なんですけど、そういう威圧感というか、壮観な光景ではあるのに”量”の感じがない。東京ドームもそういうライブでしたけど、屋外という解放感が、より、そういう印象にしてました。
詩情、と言うことになるのかな。インテリジェンス、ポエジー、イノセンス。チャマさんが、初めて楽器を持った頃やバンド結成のエピソードを手短に話してましたけど、そういうエピソードにも実感がこもってる。どこかじんわりとしみじみしていて、いわゆる”凱旋”というお祭りムードじゃなかったです。
そう、何て言うのかな。業界の匂いがしないんですよ。芸能界の感じがない。下世話さがない。歌の内容が、そうじゃないせいでもあるんでしょうね。作り手と聞き手が、一番個人的な深いところでつながってる感じがする。フジ君が自分で言ってましたけどね、こんなに一対一を感じさせてくれるライブがあるんだろうかって。
フジ君、とか言ってしまいました(笑)。あんまり公の場でそういう呼び方はしないようにしてるんですけど、今日はいいか。彼の声、好きですねえ。痛々しいくらいに繊細で、それでいて野太くてスピリチャアル。いつもの日産スタジアムと違って聞こえたのは、彼の声もありましたね。
一気に書いてますね(笑)。今回、雑誌の原稿がないんですよ。自分で書くしかない。普段、雑誌に書いたりするライブのことはここではあまり触れないようにもしてるんですよ。なぜなら、雑誌はお金を払ってもらってるわけですからね。そこはちゃんと差別化しないといけません。
というわけで、曲ですね。新作アルバム「Butterflies」から「宝石になった日」。”こんなに寂しいから 大丈夫だと思う”という一節があるんですよ。”寂しいから大丈夫”。どうですか。”寂しさ”は敵じゃないんだよ、”寂しさ”を感じなくなることは何かを失うことかもしれない。
そういう励ましもあるんだなと思います。”寂しさ”を大事にしましょうね。じゃ、お休みなさい。