の前に、BAYFM「MIND OF MUSIC~今だから音楽」最終回、無事終了です。思いがけないサプライズが仕込まれていてビックリしましたけど、良い終わり方になった気がします。メールも沢山頂きました。ありがとうございました。常連の方からも頂きました。
でも、69才で日曜日の午前中の一番良い時間に生放送の番組を持ってるなんて、若い頃には想像もしてなかったですからねえ。30代になった頃に放送作家から足を洗った時は、まさか喋り手として戻ってこれるとは、ほんとに夢にも思ってなかったです。
ラジオ、好きなんでしょうね、って他人事みたいですけど(笑)。20代の前半、一般的に言って修業時代と言いますか、右も左も分からない頃に仕事をしていた場所だからなんでしょう。スタジオに入るとホッとする感じは今もあります。
でもねえ、原稿を書いて喋り手に渡す人だったわけです。それが喋る側に回ってるんですから、信じられないという感もありますよ。僕が構成していた番組は、みのさんとか落合恵子さんとかいたわけですからね。才能溢れる人たちばかりだった。
今でも、自分で自分のことをパーソナリテイと呼べないのは、そういう人たちと同列になど畏れ多くて並べないという意識があるからですね。でも、ありがたい限りです。そういう意味では楽しい60代を過ごさせて頂いたということなんでしょうね。残りはそんなに多くないですけど、この先どんな風に過ごすか、これから考えます。
で、佐野さんの国際フォーラムだ。去年から続いている35周年ツアーのファイナル。良かったでですよ。そうですね、二つの点で感動的でした。ひとつはバンドかな。佐野さんの35年間は三つのバンドがあるんですね。ザ・ハートランド、ホーボーキングバンド、コヨーテバンド。その三つが合体したのが今日のバンドでした。
中核はコヨーテバンドなんですね。そこに、ギターの長田進さんとキーボードのドクター・Kyonさん、サックスの山本拓夫さんと西村浩二さんが加わった。コヨーテバンドのオルタナテイブ風な乾いたビートに、ベテランの味がミックスされた。演奏が若いけどスタイリッシュになった。
良いバンドだなあ、という小気味良さが一つ、そこに佐野さんのパフォーマンスが載るわけですけど、これが感動的だった。どんな風に感動的だったかというと、ともかく潔かった。ひるんでなかった、というと変ですけど、小細工をしてなかった。真っ向から自分の曲に立ち向かっていた。
自分の若い頃、と言った方が良いですね。しかも、当時よりビートはシャープにもタイトにもなってる。スピード感の増した曲もありました。そこに挑んでいた。当然と言っては何ですけど、あの頃のように歌えなかったりするんですね。でも、それがリアリテイになっていた。
一番感動したのは「ロックンロール・ナイト」ですよ。”たどり着きた~い”というフレーズが、80年代のロックのクリシェになったきっかけの曲のひとつですね。若い頃の”たどり着きた~い”のシャウトには、頑張ればたどり着ける、という未来が見えたんですよ。
よし、負けるな、俺も頑張る、みたいな共感でしょうか。でも、もうそういう年齢じゃないことも分かっているわけです。ひょっとしたら、たどり着けないかもしれない、それが分かっていて全身で歌っている感じだったんですね。
もうたどり着けないかもしれない、でも叫んでいる。叫べなくなるまで叫ぶ。若い頃と比較したがる奴はすればいい。若い頃と変わらない姿を求める人に、どう映っても良い。でも、叫んでいる時の本気度は今の方がピュアかもしれない。そう思わせてくれました。
原型をとどめないくらいに形を変えて、円熟バージョンにするとか、そんな技術的な手練手管は朝飯前なんでしょうけど、それをしない。言葉は良くないですけど、愚直なくらいにロックしようとしている。それに感動したわけです。
佐野さんはちょうど10年下になるのかな。3月で還暦。でも、そんなものは単に数字だ、と言い放ってました。それに倣います(笑)。というわけで、「ロックンロール・ナイト」を。じゃ、お休みなさい。