見ましたよ。どう言えば良いんでしょうねえ。感動したとか衝撃を受けたという言葉だとありきたりというか、うまく表せない。もちろん感動も衝撃も受けたんですが、それだけじゃない。考えさせられたという面も勇気づけられたという面もあります。
全くのノンフィクション、ドキュメンタリーですね。全て実在、同時進行で起きていることをカメラに納めてます。イスラエル占領下に置かれるパレスチナ人のラッパーの日々。新聞やテレビでは伝えられない現実とその中の音楽のあり方。ロックやヒップホップ好きは必見でしょう。
イスラエルのパレスチナ人には、1948年のイスラエル建国の時からそこにいる人たちと、第二次中東戦争でイスラエルの領土になったガザ地区という一帯に住んでいる人たちがいるわけです。中でも日々生命の危険と隣あっているのがガザ地区。いつ爆撃や砲撃があるか分からない。でも、その両者は壁に阻まれて行き来が出来ない。両方にラッパーはいるんですね。
それぞれの地区のラッパーが一緒になってヒップホップの集会をやろうとするドキュメントでもあります。家族や友人を殺された若者がラップに思いをぶちまけて、それが共感を呼んでゆく。未来も明日も失われた廃墟のような地区で暮らす若者がラップで生気を取り戻してゆく。
音楽の力、という言葉は震災後ひんぱんに使われるようになりましたが、その究極の形と言って良いでしょう。民族や国家という名の下で葬られてゆく若者たちにとっての音楽が持つ力。ラップは”武器”でした。戦車や砲撃では止めることの出来ないエネルギーがそこにある気がしました。
ヒップホップというのは、70年代の終わりにニューヨークのスラムから生まれた音楽ですよね。楽器も買えない、ライブにも行けないという若者達が路上で、自分たちの日常をビートに乗せて語り合うところから始まったのがラップです。その先鋭的で純化した伝わり方と言うんでしょうか。
そんなマンハッタンの様子を描いたのが82年の映画「WILD STYLE」でした。地下鉄の落書きアートで有名になったイラストレーター、キース・ヘデイングがモデルの映画でもありました。あの映画は当時、偶然、ニューヨークで見たんですが、その時よりも鮮烈でありました。
こんな映画がクリスマスの渋谷で上映されておりました。イメージフォーラムというところ。青山学院の側です。もし、ご興味がある方は是非。PLASTICSのライブに佐久間さんはお見えになりませんでした。体調不良とのことです。2月に彼の自薦ベストアルバムが出ます。
ということで。曲です。日本にそういうラップがあるのかどうか、あいにく不勉強です。もちろん歴史的状況も背景も違うんで同列には語れませんが、氷室さんの「My Name is ”TABOO”」なんかには、同質のものも感じます。来年、25周年ツアー。終わりなき祈りのようなツアーになるような気もしますが、どうなるでしょう。じゃ、お休みなさい。