と言って、反応される方がどのくらいいらっしゃるでしょうか。「BEAT CHILD」というのは、1987年8月22日から23日にかけて熊本県阿蘇の外輪山の”アスペクタ”という会場で行われた野外フェス。この模様を納めたドキュメンタリー映画が公開されます。10月26日公開ですね。
その時の出演者がすごいですよ。出演順に上げて行くと、ブルーハーツ、岡村靖幸、レッド・ウオーリヤーズ、白井貴子、ハウンドドッグ、BOO/WY、ストリートスライダーズ、尾崎豊、渡辺美里、佐野元春という顔ぶれ。歴史的でしょう。
更にすごいのは、この時の観衆、約7万2千人。熊本ですよ。阿蘇の山中ですよ。それだけの大観衆が集まったのは、75年と85年の拓郎さんの「つま恋」くらい。今の夏フェスのようなオムニバスイベントでは大都市でもなかったことでした。
もっと続けると、天候が最悪になった。開演直前から集中豪雨に見舞われ、それが一晩中続いた。山中ですから寒くなりますし、今、各地で発生している集中豪雨の典型みたいな雨でしたから山の斜面が流砂になって流れて行くんです。
10代、20代中心のファンの中には軽装の人も多く。そういう人が体調を崩して救急車で運ばれて行く。オールナイトですからね。照明も音響もずたずたになってしまった中で、演奏が行われ、限界を超えたようなパフォーマンスが続いて行く。そんな一夜でした。
映像があることは知ってましたし、マザーという、尾崎豊やハウンドドッグのいた事務所に所属していたアーテイストだけの記録映画は公開もされたことがありましたけど、これだけの顔ぶれが揃った全貌は初めてになります。
これだけ揃えば契約とか難しいこともあるのは想像出来ますし、無理だろうな、と思ってたんですよ。そうしたら、諸々が解決、行方不明だったマスターテープとかも発見されて今回の上映の運びになりました。もちろん初公開です。
監督は佐藤輝さん。尾崎やキャロルのフィルムで知られてますね。彼が120時間の映像の中から2時間強に編集したのが、この作品です、って当事者みたいな口ぶりでしょ(笑)。この間、書いた”新しい企画”というのがこれなんですよ。
西日本新聞で、このイベントのドキュメンタリーを連載するという話があります。まだ取材を始めたばっかりでどのくらいの規模になるのか分からないんですけどね。「ビートルズ」ほどは長くならないでしょうけど、映画公開前後はなるでしょうね。
今まで映像も音源も公になっていなかった伝説のイベント。フジロックの原型もここにあるでしょう。ウッドストックを夢見た当時の若者達の伝説が書けたらと思ってます。映画公開の情報解禁が今日だったんで、内緒にしてました。
僕も行ってましたからね。夜中に取材陣がバスの中に避難するのが厭で、ずっと会場にいました。ささやかな意地でした。寒さで倒れるかと思ったのはあの時くらいでしょう。ステージ前の塹壕のようになったカメラマン席で難を逃れてましたけど、
その時、一緒にいたのが、今も浜田さんを撮っているカメラマンの内藤順司さんですね。翌日、熊本市内のビジネスホテルで泥を洗い流して仮眠して帰ったんだ。シンプ・ジャーナルの大越さんも一緒だったはずです。懐かしいな。
その後、どんな悪天候の野外もどっか平気なのは、あれを経験してるからでしょう。どんな連載にするのか、取材しながら考えます。ということで、曲は白井貴子さんかな。こんな雨の中でやるの、という躊躇と決断がすごいです。「チャンス・チャンス・チャンス」を。じゃ、お休みなさい。