昨日、携帯ラジオを買ったんですよ、って全然本題じゃないね(笑)。夜、気の置けない業界の人たちとの食事会があって、これは夜10時の「ANNG」までには帰れないと思ってヨドバシカメラに寄ったら、ICレコーダー付き、予約録音可能な携帯ラジオというのがあったんで即買いしました。
で、今日、聞いたわけですよ。そうしたら冒頭の15分は録音されてたんですけど、その後は、雑音だけでした。何でだ、と思ったら、その頃に二次会に移動したんですよ。そこが六本木のホテルのバーで電波状態が良くなかったんでしょうねえ。全く、何のために買ったんだ、でした。
予約録音にしていても電波状態が良くないところでは、やっぱり駄目なんですね。当たり前か。オープニングの松田聖子の同一コード即席アレンジだけは聞けましたけど、面白かったです。その後は知りません(笑)。今度から予約録音の時は携帯といえども家に置いておきます。
で、本題だ。「マイ・バック・ページ」という映画ですね。見ました。面白かったとか感動した、あるいはつまらなかったとか退屈だったとか、そういう次元じゃなかったです。「ちゃんと作ってるなあ」という淡々とした感慨というんでしょうか。
主演、妻夫木聡、松山ケンイチという若手人気男優。原作は評論家、エッセイストの川本三郎さん。彼の同名自伝的ノンフィクション・エッセイの映画化ですね。本が出たのは88年。発売時に読みました。川本さん、やっと書きましたね、という感じでした。
舞台は1969年から72年。実際に起きた事件が基になってます。同時に川本さん自身のことでもあります。彼は朝日ジャーナルの編集部員でした。入社してすぐくらいかな。映画の中でも描かれるように、誠実な優しさと世の中に染まらない正義感の持ち主でした。
妻夫木聡が、川本さん役ですね。もう一方、松山ケンイチは、朝霞の自衛隊基地に武器を奪おうと侵入して自衛官を殺害してしまう”過激派”組織のリーダー。かなり誇大妄想的な人物なんですが、同世代の二人の立場の違う若者の関係がテーマです。
妻夫木聡演じる川本さんは、つねに自分を安全地帯に置いて世の中に関わるジャーナリストのあり方に疑問を持ち、”過激派”の若者にシンパシーを感じ、それを自分で伝えようとしてのめりこんでしまい、それが原因で警察に捕まり、相手から裏切られて会社を辞めざるを得なくなるという、苦い話でもあります。
東大安田講堂以後の話ですね。東大出身のジャーナリストは、自分の仲間が機動隊にめったうちにされるのを見て、彼らは命がけで古い権威や体制と戦っているのに、入社試験を受けて会社員になった自分は何だ、と「うしろめたさ」を感じて、そうした行動に向かって行くわけですね。
その辺の話は、なかなか説明しにくいですし、今の若者に理解してもらうのは、ほんとに難しいんですが、ジャーナリズム論として見てもらえれば、同じ土俵が出来るんじゃないかなと思いました。「ちゃんと作ってるなあ」というのもその視点がぶれてなかったからでしょう。
過激派の行動を自分の”トクダネ”にしようという職業意識と、彼らのことは自分なら理解できるという同世代の親近感で取材していたことが、結果的に、「仲間」と見られてしまい、なおかつ「取材源の秘匿」を通したために逮捕されてしまうんですね。
”取材源の秘匿”。自分が取材した相手は守らなければいけないというジャーナリストとしてのモラル。例え警察から求められても相手に不利があると思われる時は教えない。そういう人が今、どのくらいいるのか、分かりませんが、川本さんは、そういう人だったんですね。
でも、あの時代の学生達の多くがそうだったように川本さんも、そういう挫折ともに会社を去って映画評論家になるわけですが、ずっと、その時のことは封印しているように見えてました。「マイ・バック・ページ」は、初めて書いた本だったんじゃないでしょうか。
69年から72年というのは、「新宿プレイマップ」があった時代でもあります。片や大朝日新聞、こちらは創刊したばかりの海の物とも山のものともしれぬ街のタウン誌。比較するのもおこがましいですが、同じようなことを感じていたとも言えますし、他人事としては見られませんでした。
決して明るい楽しい映画じゃないですが、こんな時代があったんだということも含めて見応えはあると思いますよ。そういう時代だった、という象徴的なエピソードが、お互いが立場を超えて共感するきっかけが「CCRが好きだ」という点だったことでしょう。ロックが好きだ、ということで何かわかり合ったような気になれる。そんな時代でした。
ということで、もし興味があれば。ちなみに「マイ・バック・ページ」というのはデイランの曲名です。妻夫木聡の部屋にデイランのポスターが貼ってあるのが印象的でした。まだ書きたいことはありそうですが、曲だ。真心ブラザースと奥田民生で「マイ・バック・ページ」。主題歌になってました。じゃ、お休みなさい。