87才。さて誰でしょうか。小林旭さんですよ。昨日、SRGホール有明で見た「大滝詠一トリビュートコンサート」にシークレットで出演してました。それまでの出演者とは全く違うシルエットが出てきたなと思ったら何と!でした。
大滝さんが作曲して阿久悠さんが詞を書いたのが85年に味の素のCMソングとして作られたのが「熱き心に」。「サイダー73」で大滝さんをCMソングの世界に引き込んだCMプロデユーサー、大森昭男さんが「今度は逃げられませんよ」と言ったという曲。
朗々として雄大なスケールはポップスや歌謡曲というジャンルを越えていた。あの地平線の彼方にまで届きそうなハイトーンでなければ歌えない曲。司会の佐野史郎さんが言っていた「エルビス・プレスリーと並ぶ大滝さんの憧れ」が生んだ曲でしょう。
さすがに声が出にくくなっているところもありましたけど、それも味という存在感、すごかったです。初めて見ましたからね。堂々と歌い切った姿に思わず涙が出そうになりました。客席の拍手もすごかったです。鳴りやまない万雷の拍手でした。
どんなコンサートになるんだろうと楽しみにしてたんです。それ以外の出演者は公になってましたし、FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」でもい銀次さん、杉さんに出て頂いてコンサートへの抱負もお聞きしてました。
大滝さんの作曲家としての実績を語るには欠かせない聖子さんや森進一さんも出ない。大滝さんにはスタンダードなポップスと遊び心に富んだ「ノヴェルテイ路線」と両面ありました。当時は理解されなかったことが今は、評価の対象になっている。
誰が何を歌うんだろうという組み合わせの妙。それが存分に発揮されてました。白眉だったのが「福生ストラット・PARTⅡ」をカバーしたトータス松本さんが歌った「ナイアガラ音頭」でしょう。ウルフルズのプロデユーサー銀次さんも一緒でした。
ハンバート・ハンバートがはっぴえんどの「はいからはくち」を歌ったり、稲垣潤一さんが聖子さんの「風立ちぬ」を歌ったりね。最後が大御所、吉田美奈子さんの「夢で逢えたら」だったのも壮観でした。
一番感心したのが伊藤銀次さん。何が一番惹かれていたんだろうと考えて出た結論が「歌」。。彼が歌ったのが「ロンバケ」の「スピーチバルーン」と「イーチタイム」の「ペパーミント・ブルー」。大滝さんの歌い方を自分のものにしてました。
しかもバンドを率いるのが「ロンバケ」の井上鑑さん。ミュージシャンの中にも当時演奏している人もいたし、この音、この演奏だよねというバックとともに歌われるタイムスリップ感もありました。いいトリビュートコンサートでした。
というわけで初めて行ったSRGホール有明。立派なビルが立ち並んで一大オフィス街という感じでした。こういう東京もあるんだなあと。僕らに落ち着ける場所ではなかったですけどね。今週は久々のコンサートラッシュなんです。
明日がフォーラムの浜田さん、明後日はトヨタアリーナのMUSIC AWARDS JAPANの表彰コンサート、日曜は日産スタジオのbuck number。帰りが遅くなりそうで書く余裕はなさそうですが。曲です。小林旭さん「熱き心に」。じゃ、お休みなさい。
FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」6月後半の二週の特集が「大滝詠一と萩原健太」。伊藤銀次さん、杉真理さんに続く、大滝さん7週ぶち抜き特集。来週15日と22日の放送。3人目のゲストが音楽評論家の萩原健太さん。彼の新刊本「幸せな結末・大滝詠一が出来るまで」の紹介です。
発売が3月末なのにもう5刷りになったそうです。僕が先月に買った時は4刷りでした。発売二カ月あまりで5刷り。つまりその時に印刷した部数が売れてしまって足りなくなり刷り増しする。それが5回目ということになります。
本が売れない、特に音楽の本はそういう結果をなかなか出せないという時代のベストセラー。しかも発売元が音楽に縁があるとは言い難い老舗出版社、文芸春秋ですからね。喜ばしい。快挙としかいいようがないです。
健太さんは今、洋楽に最も精通している評論家というより研究者。彼が91年に福生の大滝さんの自宅に泊まり込んで三日三晩行ったという異例のロングインタビュー。でも、大滝さんの「これは死後公開だな」ということでそのままになっていたもの。
なくなったのが2013年。13回忌も終わったのでいいかとまとめたのががこの本。ともかく内容が濃い。「出来るまで」ですからね。物心ついた時のことから克明の音楽とのかかわりが細部にわたって語られてます。
彼が母子家庭だったことは知られてますが、母親が聞いていた音楽から彼を取り巻いていた音楽。その中でどんなものにどんな興味を示していったのか。小学生時代。中学、高校、そして上京して細野さんと出会ってはっぴいえんどに繋がってゆく。
細かいですよお。身近だったり仲の良かった友人、奥様になる女性。具体的な人物が登場して彼らとのエピソードが連なっていく。その時々の音楽について語られてゆく。ともかく入り込み方が尋常じゃないんです。
一を知るには十を知らなければいけない。もっとも頻繁に出てくるのがエルビスプレスリーで、彼を入り口にしてアメリカンポップスにのめり込んでゆくわけですが、その度合いがすさまじい。その知識欲にはただただ驚かされるばかり。
たとえば、高校の時に一日中、地元のレコード店に入り浸って、お店のレコードをほとんど聞いてしまう。それだけじゃなく歌詞カードもチェックして店員さんよりも詳しくなる。音楽だけじゃない、野球や落語、一事が万事そうなんです。
晩年、野球評論も書いたりしてましたけど、僕らみたいに表面的な通り一遍じゃない。データや分析。独自の解釈にもとずいた持論や自作。マニアというか研究者。究極の趣味人。それでいて語り口調もユーモラスで人柄がにじみ出てる。
いわゆるインタビュー。話したことを文字起こした原稿だと思ったら大間違い。丁寧に再構成されている。実際に話を聞いているような気がしてくる温度感のあるインタビュー。これは他の人には絶対にできない、書けないという本でしょう。
萩原さんは勤務していた出版社時代に行われた大滝さんとの取材で 意気投合。1時間の予定が8時間に及び、こんなことをしてる場合じゃないと翌日に辞表出して評論家になったという人。大滝さんから一番信頼されていたジャーナリスト。
そういう「大滝さん愛」に溢れた読み物として楽しめます。大滝さん関連の決定版ですね。自分がいかに凡人かということを痛感しました(笑)。でも、エルビスファンとしては随所にエルビスの名前が出てくるのがうれしかったです。
というわけで、本のタイトルにもなった97年のシングル「幸せな結末」を。じゃ、お休みなさい。
FM NACK5「J-POP TALKIN’」の今週と来週のゲスト。27日に新作アルバム「First Cry」を発売した竹原ピストルさん。5年ぶりの番組登場でした。新作アルバムは生まれて初めての鳴き声。「産声」を意味してます。
竹原さんは、99年にフォークデユオ、野狐禅を結成、2003年にメジャーデビュー。2009年に解散してソロになりました。それまでの事務所、オフィスオーガスタを離れてのインデイーズ活動。単身、ギター一本で全国280本のライブを敢行してました。
2014年にふたたびメジャーに復帰して今に至ってるわけですが、最初にインタビューしたのは野狐禅の時。デビューアルバムは「便器に頭を突っ込んで」。デビューシングルの「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」が強烈な印象がありました。
生き急ぐような性急さと言葉のスピード感。素手で世界に立ち向かってゆくような気合。大学のボクシング部の主将をしていたという背景を裏付けるようなファイテイングスピリット。出口のない状況を突破しようとする歌と言葉は生々しかったです。
それから25年。すでに武道館公演もやりましたし紅白にも出ました。無骨でシャイな優しさは歌だけでなく俳優としても評価が高い。メジャー復帰した頃の「狼煙」に会った”アンダーグランドからのし上がってやる”という感じでは薄くなってます。
彼は、「言わなくてもいいこと」が増えてきた。「敢えて言葉にしなくなってきた」という言い方をしてましたけど、もっと歌や音楽の幅も広くなって懐も深くなった。新作「First Cry」はそんなアルバムでした。
第一印象、「ノーガードアルバム」。ファイテイングポーズをとってない。日常的で自然体。色んな表情がある。らしい曲も今までのイメージではらしくない曲もある。今ままで書いてこなかったと思われるかわいらしく微笑ましい曲もある。
その中にある「オオセンチコガネ」「ありがとう」「失礼だ」と並全部違う3曲が象徴的でした。「オオセンチコガネ」は動物の糞を食べてる虫、「ありがとう」は我が家の灯りを歌ってます。「失礼だ」は、昔の自分のこと。あの頃の自分は何て失礼な奴だったんだ。
そういう曲を受けてどんな歌をうたっても「全部俺だ」という曲も入ってる。フォークロックから言葉遊びのようなラップやモノローグもある。ジョージ秋山の「浮浪雲」のような「野良犬」的センチメンタリズムやロマンティシズムもある。
前作からわずか一年三か月。「曲を書くのが楽しくてしょうがない」という49才。12月に50歳。「文人」と「武人」と「歌人」と「浪人」が一緒になってる。良い感じで年を取ってるなあと思える一枚でした。
でも、ライブでは「薬づけでも生きろ!」と激を飛ばす「Live in 和歌山」のような曲もやってます。今、貴重な男性シンガーソングライターです。というわけで、アルバムから「黙る海、丸い月」を。じゃ、お休みなさい。
なぜなのか自分でもよくわからないんですけど、途中から尾崎さんのことを思いながら見てました。昨日行われた川崎鷹也さんの初めての武道館。完売でした。1995年5月生まれ。先日31歳になったばかり。でも、二児のお父さんでもあります。
栃木県の高校を出て状況、音楽学校に行きながら勉強して2017年からライブ活動を始めて10年目。2018年にインデイーズでデビュー、2020年に「魔法の絨毯」がSNSで評判になって一躍メジャーな存在として脚光を浴びてるようになりました。
NACK5の番組に初めて出て頂いたのが2021年。それからほぼリリースごとに話を聞いてます。素直な性格がそのまま出ている丁寧で的確な話はラジオ向きだなあと思ってたのですが、ライブではもっとそれがダイレクトに伝わります。
ということはこれまでのライブで確かめてましたけど、初武道館ですからね。どんなライブになるんだろうと思いながら足を運んだのですが、「初」とは思えなかったんです。落ち着いている、浮ついたところとか気持ちが空回りしてるところが全く感じられなかった。
地に足がついている。自分が何をどうやって伝えるかを把握している。それを伝える術を心得ている。バンドはついてましたけど、ほぼ全編、ギターを持ったままで気持ちよさそうなフェイクを入れながら歌ってゆく。
肌身離さずいつもギターを持っているという代表的な存在が坂崎幸之助さんでしょうけど、ソロですし、歌いっぱなしですからね。曲に合わせて子供のころの写真を流したりという等身大。まぎれもない「弾き語りシンガーソングライター」でした。
で、何で尾崎さんを思い出したかというと「声」でしょうね。「歌」の説得力。もちろん声も違いますし、歌っている内容は180度違う。でも、だからそう思ったんでしょう。川崎さんの歌はほぼ自分の体験。特にラブソングはそう。
高校の時の憧れの先輩だった今の奥様に向けた気持ちを書いてる。そういう意味では「愛情」の中身がともなってる。それがステージに出てるような気がしたんです。尾崎さんはいきなり「青春のカリスマ」に祭り上げられてそれとの葛藤の人生でしたけど、ラブソングは本当に優しい。
最後のアルバム「誕生」も奥様と息子に向けられてました。でも、「愛情の中身」みたいなものを手にしないままああいう結末を迎えざるを得なかった。対極的な存在。ふっと、彼もこういうことを歌いたかったんじゃないかなあ、と思ってりしてました。
ヒット曲が沢山あるのでも新しい何かや派手な話題性があるわけじゃない。でも、「川崎鷹也」という「人間の中身」が伝わってくる。ダンス系全盛の時代にこういうライブで初武道館をソールドアウトにする。いろんな音楽がちゃんと届いてるという証のようでした。
というわけで曲ですね。「またね、ヒーロー」という曲を。「頑張れ頑張れ」という「無責任なヒーロー」を歌った曲。MCにも説得力がありました。じゃ、おやすみなさい。
FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」の6月前半二週です。大滝詠一さんと杉真理さん。5月後半の二週が「NIAGARA TRIANGEL Vol1・50周年盤」の全曲紹介を伊藤銀次さんをゲストにお送りしました。その続編ですね。
50周年だからと言って「Vol.1」だけしか取り上げないというのも杓子定規。「1」があれば「2」もある。しかも去年はYMOを取り上げていた「MUSIC AWARDS JAPAN」のトリビュートコンサートは今年は大滝さんです。
あのコンサートはFM COCOLOが深くかかわっていることもあって僕らも全面協力。僕の番組はI2014年に始まったのですが、大滝さんが2013年になくなったことがきっかけで、そういう人たちのことは残しておかないといけないと始まりました。
最初の特集が大滝さんだったんです。あれから番組も13年目。改めて大滝さんをいろんな角度から紹介しなおそうということで6月も含めて7週間特集します。前半二週のゲストは杉真理さん。言うまでもなく「2」の3人のうちの1人です。
「1」は大滝さん、銀次さん、佐野さんという3人。「2」は大滝さん、杉さん、佐野元春さん。杉さん、1954年生まれ、佐野さん、1956年生まれ。銀次さんと佐野さんがそうだったように少し年が離れていて。音楽的に近しいものがあるという二人です。
ただ、「1」は、銀次さんも達郎さんもソロデビューする前。いわば無名の2人。「2」は82年発売、大滝さんは「ロンバケ」や松田聖子さんの「風立ちぬ」で時代の寵児。杉さんは77年、佐野さんは80年デビュー。新世代のロック・ポップスの騎手として注目の存在。
そういう意味は注目度は段違い。3人がそれぞれ自分の作品とは違う趣をこめている。杉さんの話が当時のエピソードを交えて語ってくれました。大滝さんが二人の個性をどう生かそうとしたか。それぞれの特性をどう見極めていたか。改めて驚くことばかりでした。
杉真理さんは4月29日に7年ぶりのアルバム「MUSIC MAN」を発売しました。二週目はコロナ禍で活動が出来なかった頃に書いた曲を中心にした新曲書き下ろしアルバムの全曲解説。82年当時の彼と2026年の現在地が分かる二週になると思います。
収録は昨日だったんですが、楽しかったです。銀次さんもそうだったんですが、大滝さんの話をする時にほんとに楽しそうで敬意と愛情にあふれている。そんなにメデイアに登場しなかった分、尋常じゃないマニアックなエピソードに事欠かない。
音楽に対する知識の深さやそれを自ら実践する執着力、そして形にする実行力。稀代の音楽ファンでありクリエーター、作家、さらにシンガー。巨人という言葉は彼のためにあるよ思わされる。僕らはまだその一角しか知らないを思い知らされるでしょう。
というわけで、「NIAGARA TRIANGEL Vol.2」から「オリーブの午后」。改めてアルバムを聴いていて、彼の声の涼やかな心地よさを実感しました。風通しのいい声というのはこういう歌を言うんだという一曲です。じゃ、おやすみなさい、