・驚きましたねえ。いきなりの引退発表。しかも1時間40分の会見。そういう場では都合の悪いことを聞かれないように短時間で終わりというのが普通でしょうけど、思いのたけを全部話したいということだったんでしょう。無念さ、そして誠実さ。その両方に思えました。
・複雑ですよね。自分の音楽的限界と最愛のパートナーの看護。内的理由と外的理由。どちらも切実でしょうし。才能あるアーテイストにとっての引き際という点でも色々考えさせられるものがあります。
・色々考えさせられるというのは一人のアーテイストの生き方というだけじゃないですよ。週刊誌の報道、そして、それに対しての世間の反応。彼にすれば「不倫」という事実無根のレッテルが貼られたことへの屈辱的な思いというのもあったでしょう。
・アーテイスト生活を削っての看護と「不倫」という、それこそ週刊誌的な取り上げられ方。不本意だったでしょうね。こんな思いをさせられるのなら全てにけりを付けようと決心したんじゃないでしょうか。
・一度は頂点を極めたアーテイストの最終章。ネットで氷室・安室・小室、と揶揄するような書き方もありました。事情こそ違え、それぞれの潔さという点では共通するのかもしれません。いや、そうでもないか。氷室さんは、外的な要因でやむをえずそうせざるをえなかったわけですから。
・でも、小室さんはプロデユーサーですからね。自分のパフォーマンスだけじゃない才能の発揮の仕方もあるわけで、そういう意味では惜しいということに尽きます。90年代後半に一世を風靡したTKサウンドで育った世代がどう年を重ねて行くか。そこに寄り添った音楽作りというのは彼にしか出来ないでしょうし。これからですよね。
・でも、世の中が妙だなあと思うんですよ。「不倫」くらい、とは言いませんけど、何でそこまで聖人君主であることを求めるんだろう。音楽だけじゃなくて物を作る、何かを表現する才能の持ち主の多くが、どこかに欠落部分を持っている人だったりもするわけです。それでいいじゃないか、と何で思えないんだろう。
・みんな同じような型にはまっていて、みんな同じような物差しで生きていて、誰も破綻しない、はみ出しもしない。そんな世の中が面白いと思いますか。みんなと同じように生きられないから音楽を作る。音楽に救われている。それがアーテイストであり芸術家でしょう。
・相撲にしてもそうですよ。暴行事件は論外としても、白鵬の取り口までなんであんなに批判するんだろう。かちあげや張り手だって認められた攻め手なわけです。横綱の品格としてふさわしくない、という人は、相撲に何を望むんでしょうね。
・という話しじゃないな(笑)。でも、小室さんは以前の詐欺事件の時も「罪と罰」という本に率直なことを明かしてましたよね。あの本が出たときにインタビューしましたけど、誠実な人だなあという印象でした。
・初めてTMネットワークのライブを見たのはデビュー直後か直前のTBSホール。日本にないバンドが出てきたなあと思いました。その後のストーリーの劇的さは他に例を見ません。彼の功績が正当に評価されますように。石もて追われるごとくにならないことを心から願ってます。
・というわけで、TM NETWORKのブレイクとなった曲を。FANKSという造語もありました。ファンクとパンクとファン。そういうコンセプトメイクの達人。「GET WILD」を。と思ったのですが、変えます(笑)。
・中森明菜さんの「愛撫」。94年のシングル。作詞は松本隆さん。昨日、松本さんとこの曲の話をしたばかりなんで。ブレイク直前の小室さんの作曲。素敵な曲です。「才能あるよねえ」と彼も言ってました。じゃ、お休みなさい。