あらためてあのDVDを見ていたんですけど、すごいなあ。何度見てもすごい。何がすごいって、たくさんありますよ。まず、ああいう映像を作ろうとすること自体がすごい。と言ってもご存じない方のほうが多いと思います。宣伝不足、はなはだしいですが、それは置いておいて。
浜田さんのDVD「僕と彼女と週末に」ですね。CDもあります。「THE BEST OF SHOGO HAMADA VOL3」というベスト盤と連動してます。そもそもはCDのベスト盤があっての企画と言って良いでしょう。
彼のベスト盤は、すでに「1」「2」と出てるんですが、「3」は、それまでの2枚とはやや性格が異なります。彼の作品の中で、シリアスなテーマ性を持った曲、たとえば、核戦争とか、環境破壊いとか、日本という国の来し方行く末とか、そういう背景を持った曲ばかり集めてます。
で、そこに収録されている曲を素に作られているのがDVD「僕と彼女と週末に」ですね。それらの曲を、未発表ライブ映像を使って構成してます。と言うものの、ライブ映像は半分もないんですね。ほぼ全編がニュース映像、まず、これがすごい。
何しろ、日本の近代史をつづっている。曲はもちろん全曲彼の曲なんですが、使われ方がすごい。発表された時は、こういう曲だとは思わなかったという文脈で全く新しい意味を持っている。何しろ映像は江戸時代から始まってるんですから。
江戸時代の日本、そして幕末の開国、富国強兵から列強との拮抗、アジアへの侵略、第二次世界大戦。戦後の焼け跡からの復興と高度成長。まさに、僕らの歴史、僕らが生まれる前からの歴史をどっから集めたんだろうというニュース映像でつづっている。
それだけじゃないですよ。そうやって日本とアジア、日本と世界の歴史を振り返りつつ20世紀の世界も見せてくれる。アメリカの世紀と言われる20世紀は同時に戦争の世紀でもあったわけで、日中戦争やベトナム戦争、アフガニスタンからイラク。そこは世界史です。
更に、今、地球が直面している環境問題までを、ことさらに声を上げることなく淡々と映像をつないでゆく。そこに浜田さんの曲が流れているわけです。逆か。浜田さんの曲を、補完したり裏付けしたりというように流れてゆく、という感じです。
曲と映像が一体になっている。それがすごい。最近は、ライブでもニュース映像を使ったりという試みも増えてますが、そういう部分的な借用ではない。曲が呼ぶ映像というのが全編流れてます。ほんとにすごいですよお。時には胸が痛くなったり、息をのんだり。
100歩譲って、こういう映像を作ろうと思う人はいても形にするだけの労力とセンスを持ったスタッフがいるかということもあるでしょう。音楽をどう見せるか、という意味でも画期的でしょう。すべてが曲であり、すべてが音楽である、そして、そのアーテイストの世界である、という意味でもです。
しかも、前に書きましたけど、彼が登場するのは全編がライブ映像なわけで、ステージでこういう曲を歌ってきたのかとか、そこでの覚悟のような決意とかまでひしひしと伝わってきます。こんなライブをやってる人は他に居ないだろうなあと思わされます。
まだあるんですよ。DVDにはテキストがついていて、それを池上彰さんが書いてます。日本の近代史や世界の戦争史ということについても、彼ならではの客観的で一面的にならない解説が読みごたえ十分です。まるで教科書のようですね。こういう教科書なら歴史は面白かったでしょう。
中には、ここまでやる必要があったのか、という意見もあるんだと思います。ファンはそこまで求めてないとかね。でも、本人も含めてここまでやることに踏み切った人たちの”想い”の方が重要な気がしますね。無難な道を行こうとすれば、必要ないとも言えるわけですが。音楽はここまで出来る、そういう例でしょう。
ただね、もっと評判になって良いんだと改めて思いますよ。レコード会社の方も、どうやって扱っていいか分からなかったのかもしれませんね。新人を売ることは知っていても、これだけ志の高い音楽映像を扱うのは初めてだったんでしょうから。
ということで、もしご存じない方は、是非、一度ご覧になって頂けると、と改めて思いました。今年は4月から浜田さんのツアーが始まるわけで、こうした曲が中心の初めてのツアーということになるのかもしれません。毎回、そうなんでしょうが、二度とないツアーというのは、まさに今回のことを言うんだと思います。
そんなわけで、マジです(笑)。曲は、「僕と彼女と週末に」を。じゃ、おやすみなさい。